監査法人で激務に苦しむ公認会計士がワークライフバランスを充実させる転職のために考えるべきこと

ワークライフバランスを充実させる転職のために考えるべきこと 転職のノウハウ

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公認会計士試験に合格するとあまり考えることもなく、一般的だから、周りもそのようにしているからという理由で監査法人へ就職する方が多いです。

公認会計士登録をして、年次が上がって難しい勘定を担当するようになったり、複数の主査を担当するようになったりすると仕事量が増えてきます。
私生活を犠牲にして、仕事にすべてをささげる働き方に疑問を覚える方もでてくるのではないでしょうか。
今回は公認会計士が転職を通じて、ワークライフバランスを実現するためのポイントについて解説します。

自分にとってのワークライフバランスとは?

ワークライフバランスの充実が世間的にもかなり受け入れられるようになっていますが、人によりワークライフバランスの感覚は異なります。

子育てをしたい方にとっては、16時ぐらいまでの時短勤務を受け入れてくれる会社かもしれませんし、今まで監査法人でバリバリ働いていた方にとっては月残業20時間であれば、ワークライフバランスに優れた職場と映るかもしれません。
出社時間やリモートワーク等で働き方に裁量がある方がワークライフバランスがよいと捉える人もいるでしょう。
又、ワークライフバランスが充実していますと主張している企業の中には、絶対に〇時にまでに帰らなければならないと強制して、社員にストレスをかける会社もあります。
社員の中には昼休みを削ったり、朝早くきてサービス残業を強要されるといったことをして「ワークライフバランスとは?」と疑問に感じる会社もあることは事実です。

又、ご自身のワークライフバランスを求める時期が一時のものなのか、それとも長期的なものなのかも重要です。

例えば、子育てを優先して、今はワークライフバランスを充実させたい方は、子供が大きくなった後スムーズに復帰できる環境にあるのかが一番重要になります。
子育てを重視して、一線を離れると、本人の意欲があっても中々一線に戻るのは難しいケースもあります。
面接時等に実際に育児中で時短勤務中の方はいるのか、過去に時短勤務をした方で復帰した方は今はどのような仕事をしているのかといった質問をして、疑問や不安を解消するといいでしょう。

又、長期的なワークライフバランスを充実させたいと考えている方は、面接等で残業時間を聞いた方がいいでしょう。

面接で残業時間を聞くのはNGと就活本等で言われていますが、ワークライフバランスを充実させるための転職であればミスマッチを起こさないためにもしっかり聞いておいた方がいいと思います。
専門職で確固たるスキルがあるのであれば、ワークライフバランスを重視してという理由での転職も受け入れられる傾向にあります。

後は、ワークライフバランスを重視する場合であってもなるべく市場価値が高い業務に関われる仕事を選ぶとよいでしょう。
短期的には、難易度の割に報酬が高い仕事であっても中短期でみるとご自身の市場価値が下がっていき、選べる仕事は減っていくケースがあります。
又、ワークライフバランスが大事と思って転職しても、業務のレベルが低く、やりがいを感じないとまた転職してしまう方もいます。
実はワークライフバランスよりも自分の専門知識を活かせるかどうかが重要だったタイプの転職失敗例です。
自分の中でのワークライフバランスとは何か、大切な自分にとっての軸をはっきりさせることで本当に自分にあった転職先が見つけやすくなります。

監査法人が激務になりがちな理由

監査法人が激務になりがちな理由を見ていくことでいかにしてワークライフバランスを向上できるか考えてみましょう。

繁忙期が決まっている

これはメリット・デメリットがあると思うのですが、監査法人の特徴として四半期、期末決算と繁忙期が決まっていることが挙げられます。
更に通常は複数のクライアントを掛け持ちするので、決算期に仕事が集中してしまい、連日の深夜残業・休日出勤といった事態になってしまうのです。
(なお、働き方改革である時刻になるとPCが強制的にシャットダウンされる法人もあるようですが、仕事が終わらないので、シャットダウンを回避する方法を探したり、朝早く来て仕事を片付けたりと大変なようです。)

一方でメリットもあり、閑散期には2週間丸々休みをとって海外旅行にいったりといったこともできます。
なお、金融系の部署やIPO関連部署のように年中忙しい部署もあります。

労働集約的である

監査法人は時間×単価の労働集約的なビジネスです。
専門性と規制があるゆえに単価は高くなりますが、時間と比例して報酬が伸びていく仕組みになっている以上、一人当たりの稼働率を高めないと業績はあがりません。
AIにより監査が効率化されるのは、まだまだ先の話になるでしょう。
従って、コンサル等同じく労働集約的な業界に転職すると単価を上げることは可能ですが、ワークライフバランスもとりつつ、会社からも高い評価もされるというのは、難易度が高いでしょう。
ただ、よくよく探せば中には代表の考えでワークライフバランスに優れている特徴のあるコンサルや監査法人もあります。

供給が決まっているので、人を急には増やせない

監査法人に入社する人数は、公認会計士試験による制約があり、急に需要が増えたからといって急に供給を増やすことができません。
過去もJSOX導入で会計士が足りないからと急に質を落として合格者を増やした結果、特需が終わり、大量の会計士が就職難やリストラになったことがありました。

どうしても専門職で供給が限られている以上、一時的な需要の増加時には、人が足りなくなり、激務になる傾向があります。

対クライアントの仕事である

監査法人は規制に守られているとはいっても対クライアントの仕事です。

有給をとっていても複数主査をもっており、頻繁に質問や問い合わせをしてくるクライアントがいる場合は、人によってはメールをチェックしてしまう等心が休まることがないといった話もききます。

又、監査法人ではメインのクライアントがビッククライアントで張り付きの場合は別ですが、通常複数のクライアントを担当することになります。

繁忙期で酷い時だと定時まで1社クライアントにジョブが入っており、その後別の会社の仕事が入れられてしまうことがあります。
又、ノートPCを貸与されるため、どこでも仕事ができてしまうという点もあります。

監査法人の会計士は、ノートPCを貸与されます。

仕事が終わらない場合、持ち帰って仕事ができる環境にあるのです。実際、昔は私も仕事が終わらなかった場合、家で仕事をすることもありました。
マネージャー以上になるとスマホを貸与され、今まで以上に仕事を完全に忘れることが難しくなります。

上記の特徴から顧客に直接サービスをデリバリーするコンサルに転職する場合は、同じような働き方になるケースが多くなることは認識しておきましょう。
もちろん例外はありますが、単純な労働強度という意味だと高くなる傾向にあります。

転職先の情報を収集する

転職先のワークライフバランスに関する情報を収集する方法について、ワークライフバランスを重視した転職先として多い事業会社経理を想定して解説します。

大手企業の経理はワークライフバランスが優れているイメージを持ちやすいですが、必ずしもそうとは限りません。

企業規模、業種、業界でのポジションにより変わってきますし、大企業の場合は部署により大きく変わってきます。

例えば、会社全体では残業時間は月平均10時間程度で優良企業として取り上げられている会社であっても、経理部は50時間ですといったケースは珍しいことではありません。
なんとなく、イメージで事業会社だから監査法人よりもワークライフバランスが優れていそうだということで転職すると、実際に入社してみて後悔してしまう方もいるでしょう。

求人をだしている企業も採用したいがために、残業時間を少な目に求人票に書いてしまったり、実際に働いている時間はもっと長い、つまりサービス残業が行われているため、残業時間が少なく出ているケースもあります。
又、残業がどの程度か聞いても正直に答えてくれるかはわかりません。

求職者も入社するために自分をよく見せようとする側面がありますし、会社も同様なので、自分で進んで情報をとりに行く必要があります。

企業の現状、自分が配属される部署の実態について、綿密な情報収集が必要になってきます。

規模、業種や上場有無により大枠を理解する

まず時間は有限なので、ざっくりと傾向を理解することが重要です。
規模、業種や上場有無によりワークライフバランスは大体規定されます。
規模は大きい方がワークライフバランスは図れることが多いです。

・規模は大きい方がワークライフバランスは良い傾向。

規模が大きい方がIT投資や効率化、アウトソース活用により社員のワークライフバランスが充実できる可能性が高いからです。

そのような単純経理業務をアウトソースしている場合の経理部社員の仕事は、アウトソース先の管理やチェック、会計方針策定、新基準導入、予算策定等少し高度なことが多いです。
規模が小さいところの場合は経理効率化のための必要性がわかっていながら、手作業でも気合と根性でがんばればできてしまう(と上が思っている)ため、IT投資をせずに社員が疲弊しているというケースもあります。
それなりの規模の連結決算をエクセルで組んだり、内部取引の消去を手作業で行っている会社がそれにあたります。
又、社員数が多いことで休んでも代わりがきくということも多いです。
メインの担当が休んでもサブの担当がいて、代わりに仕事をやる体制が整っているのです。

人数が少ない場合は、一人当たりの依存度が高いので、一人休むと経理処理がストップしてしまうという会社もあります。その場合は、中々長期の休暇をとることは難しいでしょう。
監査先で接していれば肌で感じるでしょうが、人材の質もやはり相対的に大手の方が質が高いことが多いです。(あくまで傾向としてです)

又、業種によりワークライフバランスが取れるかどうかもわかります。

小売業や飲食業は、休日が稼ぎ時ということもあり、年間休日が少ないです。

一般消費者を相手にしているようなビジネス(BtoC)の場合は、ワークライフバランスは傾向として取りにくいといえるでしょう。
それは経理であっても現場に引っ張られる傾向にあるからです。
ワークライフバランスを重視するのであれば、企業を相手にしているビジネス(BtoB)の会社がよいでしょう。
年間休日でいうと120日は最低あるか確認しましょう。

・上場or非上場は一概にはいえない

上場しているかどうかでもワークライフバランスが取れるかどうかは左右されますが、これは一概には言えません。

上場している場合は、法令順守を重視した労務管理や福利厚生が充実していることが多い傾向にありますが、上場会社の場合、決算短信や有価証券報告書、決算説明資料等作成する資料が多くなり、経理部としては、仕事が多くなる傾向にあります。

非上場の場合は、作成資料は少ないのですが、オーナー企業の場合は労働環境が悪かったり、市場価値が上場経理に比べて低くなりやすいといったデメリットがあります。

又、上場企業の場合、どの程度のスピードで決算短信を出しているかでワークライフバランスの度合が図れる場合があります。
一般的に短期間で決算短信を出している場合の方が業務量が集中するため、激務になる傾向にあります。
又、監査対象ではないのですが、会社が投資家向けに会社説明会資料を作成している場合があります。その会社説明資料が非常に凝っていて、分量が多岐にわたる会社は業務量が多いケースが多いです。事前に会社説明資料に目を通しておくとよいでしょう。
ただ、決算説明資料は会社によっては、IRや経営企画が作成している会社もあるので、面接等で業務範囲を確認しましょう。

採用している会計基準がIFRSや米国基準の場合は、傾向として残業が多くなる傾向にあります。

特に子会社には日本基準で報告してもらい、調整仕訳を本体で入れているケースの場合は、本体の経理は忙しくなる傾向にあります。

口コミサイトやCSRレポート等で情報収集する

昔は企業の内部情報は人づてにしか得る方法がありませんでしたが、今は口コミサイトが充実しており、ある程度は把握することができます。

有名なところとしては、VORKERSやキャリコネ等があります。
又、CSRレポートを出している会社の中には、平均残業時間を開示している会社もあります。

ただ、手軽にできる一方で大手企業の場合は部署によって大きく異なるので、転職する部署の口コミがあれば望ましいですが、そうそううまくは見つかりません。
実際のところは面接で確認するか、その企業をよく知っている転職エージェントに確認するといった方が確実かと思います。

エージェントに聞いてみる

これは複数のエージェントに登録している場合に効果的な手法ですが、○○についてはどうですか?と聞いてみるのも一つの手です。
特に経理財務に特化したエージェントの場合は、求人情報を載せる際にヒアリングにいくため、職場の実態の情報をもっていることもあります。
ここの求人は、定期的に退職者が出るようで、いつも求人が出ていますといった裏の情報が聞けることもあります。
逆にそこであまり具体的な情報が出てこないようであれば、あまりそのエージェントと使う意味はないと思います。
なお、恒常的に求人が出ている会社の求人は、ハードルがあまりに高いか、退職者が多く労働環境がよくないかどちらかの可能性が高いですので、慎重になった方がよいです。
いつみても経理職を募集している企業は、大企業であっても私自身何社か思い浮かびますが、実際に勤務している友人によると会社全体はホワイト企業だが、その部署は非常に労働力は多いとのことでした。

転職先の応募理由を把握する

転職先がどのような理由で採用をしたいと考えているかも重要です。

企業がどのような意図で募集をしているか想像すればおわかりになるかと思いますが、人が十分足りており、余裕があるのに採用する企業はないのです。
自分と転職先の希望が合致しないとワークライフバランスを確保したいと思っても転職後に後悔することにつながってしまいます。

そうしたミスマッチを防ぐためには、採用する企業が何を望んでいるのか、応募前に募集要項のみならず、エージェントを通じて質問したり、面接時に質問することでしっかり把握し、見極める必要があります。
募集時の理由としては、前任者退職のため、人員補充のためといった理由がありますが、そのような場合はなぜ退職したのか聞いておいた方がいいでしょう。
意外と正直に答えてくれます。
退職者の補充ではなく、経理の全体レベルの底上げといった前向きな理由での採用の方がワークライフバランスが充実させられる可能性が高いと思います。

又、人材として即戦力を望んでいるのか、それとも将来の幹部候補として将来性がある人を採用したいのかによって人材の求めるものが変わってきます。
即戦力を求める場合は、どちらかというとこれまでの職歴やスキル、経験が重視されますが、難関試験を突破したという潜在力を評価する場合は仕事に対する姿勢、潜在的な能力が重視されます。

実際に働く人の話を聞く場を設けてもらう

私は、実際に転職する際には、懸念点について、年齢やポジションが近い人の話をエージェントにお願いして聞かせてもらうこともありました。
中には断られる企業もありますが、やはり実際に働いている人に話を聞くのが、一番参考になりますし、転職時の不安が払拭されます。
又、面接に行った後に少し入り口で待ってどの程度人が出てくるか、職場のあるビルの該当階の灯りがついているかみることで裏付けをとることができます。

ワークライフバランスを保ちつつ、年収を下げたくない場合

多くの場合、ワークライフバランスを確保しようとして転職する場合は、監査法人勤務に比べると年収は落ちてしまいます。
特に若い方の場合は、そのようなケースが多くなります。
監査法人勤務の場合は800万~900万程はもらっていた方であってもメーカーの場合は、30歳で600万~700万程度であることが多く、年収は下がってしまうことが多いです。
一方で、比較的高い年齢で合格した方で30代後半の転職であれば、さほど給与面は変わらないことが多くなります。
多くの方は、ワークライフバランスを重視した転職の場合はある程度はやむを得ないと考えるのですが、ワークライフバランスも年収も上げたいという方もいます。

年収を下げたくない場合は、総合商社や金融、ベンチャー企業の管理職としての転職になるかと思います。
ただ、特にベンチャーに転職した場合は、労働時間が長くなってしまうことが多い傾向にあります。

年収をあげるにはポジションを上げる転職が方法として考えられますが、一般論としてポジションが高くなると休みは取りにくくなる傾向にあります。
経営陣とやり取りが必要になるため、長期間休暇だと対応ができない等が理由として考えられます。

一方で担当者として転職すると給与が下がってしまうケースが多いので、ワークライフバランスと給与のバランスが難しいところです。
しかし、探せば給与も監査法人と同以上程度あり、ワークライフバランスが抜群という業界・企業もありますので、じっくりと時間をかけて探すことをお勧めします。

ワークライフバランスでミスマッチを起こさないためには、人に確認するのが一番

上記で記載したように現在は口コミが発達しており、ある程度の情報はインターネットから取れますが、確かな情報とは限りませんし、大手企業の場合は、部署により別会社かのように労働環境は異なります。

又、公認会計士として即戦力としての採用の場合は、他の社員と要求水準が異なる場合もあります。

やはり最後に信頼できるのは、人から直接聞いた話かと思います。
監査法人の知り合いや同僚、補習所の同期、信頼できる転職エージェント、面接官への質問等で補完することが必要でしょう。

採用する企業も良いところを全面に打ち出してくるので、本当のところをいうのかは企業次第です。

又、テクニックとして、面接は大体終業後行われると思うのですが、希望する部署が何回かエレベーター等で確認して、帰り際に電気がついているか確認すると実態を確認することができます。

ワークライフバランスを確保した転職をするためには

上記に記載したように
・自分にとってのワークライフバランスを明確にする
・転職先の情報を収集して、ワークライフバランスを確保できそうか検証することで

ワークライフバランスを確保した転職を可能にする可能性が高まります。

最後にワークライフバランスを確保した転職をするために利用できる転職エージェントを紹介したいと思います。

大手エージェントのため、保有している案件が多くあり、事業会社の経理の求人は豊富にあります。
ワークライフバランスを確保した転職をしたいと考えている方には向いているのではないかと思います。

とはいえ、担当するエージェント次第という面はあるので、MS-JAPANに限らず、会計士や経理に特化したエージェントを併用するのがよいでしょう。

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