公認会計士が監査、税務、コンサル等それぞれのキャリアで必要な英語力についてまとめました。
会計士の中には、英語がそれほど得意ではない人も多く、TOEICでどうやったらそのような点を取れるのかと逆に驚くような人もいました。それぞれ会計士のキャリア別に必要とされる英語力も変わってきますので、キャリア別に必要な英語力について紹介しています。
監査法人と英語
監査法人にいると、クライアントもグローバル化が進んでいるため、グローバルと耳にタコができるぐらい言われますし、毎年TOEICを受ける必要があります。
又、法人によっては、英語研修と称して、2,3週間海外に語学研修に送りだしてもらえる等力を入れている分野でもありますし、英語ができる人材は監査法人でも求められています。
海外展開しておらずとも海外との取引がまったくない企業はあまりないのではないでしょうか。
なお、監査法人入社時点では英語力はあった方が望ましいですが、仕事をする中でつけていけば問題ありません。
又、今は売り手市場なので、英語力がないからといって大手監査法人に入れないこともありません。
いうまでもない話ですが、公認会計士試験に向けてまだ勉強中の方はまず試験合格を、修了考査に通ってない方は、まずは会計・監査の実務に集中した方がいいでしょう。
英語を使う場面
監査法人の場合、英語を使って業務を行うことが多いのは、国際部や国内部の内、海外子会社を多く持つ大手の監査クライアントです。
そのようなクライアントの担当になれば、英語を利用する機会は多くなります。
英語がある程度できると業務の幅が格段に広がります。
英語を利用する場面としては、一番イメージがわきやすいのは、リファードワークと呼ばれる外資系企業の日本法人のレポーティングパッケージを対象とした監査でしょう。
その他、海外子会社の監査を行っている現地の監査法人に英文でインストラクションを出す、インストラクションに対して回答をする、英文でメールをする、アニュアルレポート(英文)を監査する、英文財務諸表を監査する、証憑が英語といったケースが考えられます。
IFRS原文やグローバルの監査ツールも英訳されるまでにタイムラグがあるので、原文で読めると重宝されます。
クライアントが外資系の日本子会社の場合は、通常はやりとりする相手は日本人の場合が多いので、経理部員や担当役員が外人で日本語をあまり話せない場合を除いては英語は読み書きが中心になります。
特にスタッフの間はその傾向があります。
年次がシニア、マネージャー、パートナーと上がるに従って求められる英語力も増してきます。
特にマネージャーやパートナーになると海外の拠点に出向く機会も増えてきます。
その場合は、読み書きだけでなく、会話能力も必要になってきますし、雑談での会話、アドリブといったことも必要になってきます。
又、英語を使うジョブによっては、一定以上のTOEIC(例えば、800点以上)のみを対象にアサインされるようなものもあり、TOEICについては、最低でも800点以上はとっておいた方がチャンスが広がるといえるでしょう。
TOEICの点数だけではあまり意味がなく、英語での実務経験が伴って初めて、価値が出てくるので、チャンスが増えるというのは重要です。
上記のように読み書きが中心になるので、英語の会話能力を高めたいのであれば、海外派遣、駐在等のプログラムを利用して数年会海外で仕事をすることが近道になります。
英語圏などの語学学校に通える海外短期語学研修や海外短期派遣制度等が私の勤めていた法人でもありました。
但し、法人にもよりますが、だれでもいけるわけではなく、TOEICの点数、これまでの一定以上の評価、面談等があるため、ハードルはそれなりに高くなります。
昇進にも影響
昇進のスピードにも関わってきます。
TOEICの点数自体はさほど関係ないのですが、英語が必要な業務があるクライアントは大手クライアントの場合が多く、監査法人では大手クライアントのチームに所属していた方が監査報酬が高いため、発言力も強く、昇進しやすい傾向にあります。
零細クライアントチームより、大手クライアントチームの方がマネージャー、パートナーの発言力が強く、意見が通りやすいからです。
監査法人での出世を考えるのでれば、英語力は必須といえるでしょう。
聞いた話ですが、一部の法人ではマネージャー以上はスタッフのTOEICの点数を一覧でみることができ、アサインもそのようなことも考慮しているようなので、チャンスを広げたいと思うのであれば、英語は勉強しておいた方がいいでしょう。
とはいっても監査法人で英語が不得意であれば、英語を使わない業務に携わらないことも可能です。
これまで英語がずっと不得意だった方が多少勉強したところで、リターンは限られているので、それ以外のことにリソースを投下した方が得策のケースもあります。
皆が英語といっている中で、それ以外の領域にリソースを投入してドメドメの分野でやっていくという逆張り戦略もあるのではないでしょうか。
闇雲に法人が英語の学習を推奨しているからという理由で、英語を勉強するのではなく、自分の目指したい方向性や強みを考えて、どこにリソースを割り振るかよく考えた方がよいでしょう。
又、英語を活かしたい、伸ばしたいが、現状はそれほど英語力はないという方は国際部ではなく、あえて国内監査の部署を希望するのもありです。
国際部は英語に自信がある方が集まりやすい傾向にあるので、TOEIC800点程の英語力であれば、お鉢が回ってくる機会は少ないかもしれません。
国内監査であれば、英語を積極的に使いたい人の割合が少ないかと思いますので、熱意と最低限の英語力があれば、仕事を回してもらえる機会は多いと思います。
監査法人から他の分野に転職する際にも英語ができるというだけで選択肢は広がります。
仕事で使っていると転職市場でも英語を使った実務経験があるとアピールができるでしょう。
税理士法人と英語
税理士法人の場合は、携わる業務によって英語の使用頻度は変わってきます。
Big4の税理士法人で国際税務を手掛けている場合は、移転価格の現地のローカルファイルを作成する場合は、すべて英語になりますし、監査法人以上に上司や同僚が外国人であることも多く、会話力も求められます。
大手監査法人から大手税理士法人に転職した友人によると英語を使う頻度は監査法人よりもかなり高いとのことです。
一方で、国内税務が中心の中堅税理士法人や中小税理法人の場合は、ほとんど英語を利用する機会は比較的少ないでしょう。
会計コンサルで現地採用
会計コンサルの場合は、どのようなクライアントを相手にしているか、どのようなサービスラインがあるかにもよりますが、海外子会社を持つグローバル企業や外資系企業がクライアントの場合は、USGAAPやIFRSのレポートを英文で作成する、米国上場の日本子会社でUS-SOX対応で英文によりレポートを作成するといったケースが考えられます。
スタッフ、シニアクラスの場合は、海外上場案件等で海外の証券会社や監査法人とやりとりするといったケースを除いては読み書きが中心になるでしょう。
ただし、ポジションが上がるにつれて、クライアントとの交渉、営業の割合が多くなるため、クライアントがグローバル企業の場合は、英語ができた方が昇進の可能性は高まるでしょう。
なお、会計コンサルの場合は、入社後すぐに現地採用となる採用枠もあります。
事業会社に転職する場合は、即海外赴任というケースは少ないので、早く海外経験を積みたいのであれば、会計コンサル等の方がいいでしょう。
事業会社で駐在候補として採用、外資に転職
事業会社も大手企業の場合は、グローバル展開している企業がほとんどですし、英語と会計がわかる会計士はニーズがあります。
又、会計士は日系大手企業には、企業風土面でフィットしない方も多く、給与面で高めの外資系企業も英語力の高い会計士には選択肢になります。
とにかく英語は使ってみるのが一番なので、あまり話せない場合でも話さざるを得ない環境に飛び込んでみるのもありでしょう。
・外資系経理・FP&Aの転職
日系の一般企業に海外勤務候補として転職する場合には、入社してすぐに海外に赴任する場合はまれで、入社後2~3年は、本社等でその企業の分化や経理処理、商品の知識等を身につけてから赴任というケースが多くなります。
勤務形態は、日本の親会社からの出向扱いになり、住居費が会社持ち、日本での役職よりも一ランク上の扱いとなり、赴任手当がかなりつく等監査法人で駐在するよりも待遇的には恵まれていることが多いです。
まとめ
公認会計士が実務で英語を使うかどうかは、進むキャリアにより大きく変わってきます。
英語がただできるだといくらでもそういった人はいるため稼ぐ力には直結しにくいですが、会計もわかって英語もわかる、英語と日本語で会計監査のコミュニケーションができる人材となると希少性がでてきます。
英語ができることで公認会計士が選べる選択肢は間違いなくひろがってくるでしょう。
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