公認会計士の公務員からの転職 

官公庁

※この記事にはプロモーションが含まれています。

監査法人に勤めていたときに、意外とみかけたのが、元公務員で働きながら合格して公認会計士になった方です。元銀行員や保険マンについで多かったように思います。
公務員が公認会計士を目指す理由やその後のキャリア等について紹介してみたいと思います。

公務員は安定しているのになぜだろうと思って理由を聞いてみたこともあったのですが、
・年功序列で給与面で不満があった
・将来も削減の話ばかりで将来性を感じなかった
・仕事内容に不満があった
・将来独立したい
といった理由が主なものでした。

公務員から公認会計士の転職事例

公務員から公認会計士の転職事例とはいっても多くは監査法人でスタッフ1年目から再出発することになります。転職というよりも転身といった方が適切かもしれません。
何点か公務員から会計士となった事例を紹介したいと思います。

市役所から公認会計士へ

学生時代は、ワークライフバランスと安定性を重視し、公務員試験に合格し、市役所勤務となったAさん。
ワークライフバランスは確かにとれていたものの、給与が完全な年功序列で中々上がらず、民間企業に勤めている大学の同期と比べると給与面で不満に思っている面もあった。
又、仕事内容も出先機関に出向しており、退屈で刺激を感じない日々を送っていた。
公務員は安定していると思って就職したものの、公務員が合わないと働いて初めて実感していた。
働いてみて40年近く続けるからこそ、仕事の安定よりもやりがいや自分の裁量で働けるかどうかが自分にとって重要だと気がついて、公認会計士の勉強を開始。
元々勉強が得意だったこともあり、空いている時間を使って勉強開始して3年後に合格、監査法人に就職してパブリックセクターの監査と制度設計等のコンサルティング業務をしている。
市役所では、経理・財務とは無縁の仕事をしていたものの、その際の経験が活きている。

地方公務員から公認会計士試験を勉強中

10年以上にわたり、地方自治体に勤務してきて、財務畑を中心にあるいてきたBさん。
国や地方自治体でも複式簿記やB/S、P/Lが一部導入され、会計知識が必要とされており、会計に精通した人材が不足していることを日々の業務で実感している。
これまで公務員としての経験が長いことから公務員としてのキャリアを生かすため、公務員会計士として転職はせずに勤務しようと考えている。

税務調査官から公認会計士へ

国家公務員として法人の税務調査をしていたが、税務調査は利害が対立する相手とやり取りしなければならない点や調査実績を求められることに大きなストレスを感じていた。
又、相手に煙たがれる仕事内容であることもやりがいを感じられない原因と感じていた。
税務調査をする中で税理士法人の会計士とやり取りする機会があり、公務員として働くよりも会計士として働く方がキャリアの選択肢や年収、労働環境等が魅力的と感じ目指すことを決意し、合格。合格後は、監査法人で数年勤務、現在は元税務調査官の経験を活かして税理士法人で働いている。

公務員から公認会計士になるには何歳まで間に合うか

公務員から公認会計士になる場合は、何を求めて公務員から公認会計士になるかで違ってきます。ここでは、公務員から公認会計士に転じる理由として、代表的な収入面、キャリアの広がり面からみていき、何歳まで間に合うのか、30代から会計士を目指すのはどうなのか見ていきたいと思います。

収入面から見る場合

収入面から見る場合は、公務員のままでいたら得られる収入と公認会計士に合格後に得られる収入を考えて、その年齢で公認会計士試験という自己投資をするに値するかという点を考える必要があるのではないかと思います。
人事院が行った平成30年度国家公務員給与等実態調査によると国家公務員の平均年収は 686万円とされています。
一方で厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると公認会計士の平均年収は1,018万円となっています。
例えば30歳で公務員から公認会計士への転職を目指し、2年間で合格した場合は一例ですが、生涯収入の差は5千万円ほどになります。

年齢 公務員 監査法人 差額
30歳 470 470 0
31歳 480 480 0
32歳 490 480 -10
33歳 500 500 0
34歳 510 520 10
35歳 520 600 80
36歳 600 650 50
37歳 620 700 80
38歳 640 750 110
39歳 660 800 140
40歳 680 850 170
41歳 700 1,000 300
42歳 720 1,000 280
43歳 740 1,000 260
44歳 760 1,000 240
45歳 780 1,200 420
46歳 800 1,200 400
47歳 820 1,200 380
48歳 840 1,200 360
49歳 850 1,200 350
50歳 860 1,200 340
51歳 870 1,200 330
52歳 880 1,200 320
53歳 890 1,200 310
54歳 900 1,200 300
55歳 910 1,200 290
56歳 920 1,200 280
57歳 930 1,200 270
58歳 940 1,200 260
59歳 950 1,200 250
60歳 960 1,200 240
退職金 2,200 800 -1,400
合計 25,390 30,800 5,410

公務員の収入は、https://jiseki-koumuin.com/income-2/を参考にして、作成しています。
監査法人の収入は、公務員の場合と異なり、マネージャーに順調になれるか、パートナーになれるかどうかでも変わってきますが、4年目にシニアになり、10年目でマネージャー、16年目でシニアマネージャーになって、何とかシニアマネージャーのまま定年まで勤務できた場合を想定してます。

仮定に仮定を置いている話ですし、監査法人まで定年まで勤務する人は少ないので、あくまで参考程度にとらえてもらえればと思います。
予備校代は、概ね50万~60万円程なので、仮に30歳から勉強を開始して30代前半で合格したとしても十分に投資は回収できるといえるでしょう。
30代半ばぐらいまでは、ペイできるのではないでしょうか。
又、公認会計士試験合格にかかる時間は、人によって違いますが、公認会計士試験予備校のTACによると2,000時間~5,000時間といわれており、3,500時間が一つの目安とされています。
仮に公務員の時給が2,000円程度と仮定すると3,500時間は7百万円に相当し、その時間を加味しても十分に投資効果があるといえます。
又、定年が伸びていることもあり、60歳以降も働くことが想定され、その場合はなおのこと定年後も専門性を活かして独立といった道のある公認会計士の魅力は増しているといえるでしょう。

選択肢の広さから見た場合

又、会計士試験に合格した後の選択肢の広さに魅力を感じる方もいると思います。
上記の収入面の話だけだとさほど魅力は感じない方もいると思います。

その場合は、何歳で合格したかどうか、投資を回収できるかはそれほど重視されないと思います。

公務員だと基本的に組織の方針によって、関わる仕事内容がきまり、個人の意思が尊重されることは稀です。もちろん面談等で希望は聞かれるでしょうが、希望通りいかないことも多いかと思います。
又、公務員から他に転職しようとしても国家Ⅰ種のキャリア官僚を除いては転職は民間に比べるとしずらいでしょう。
会計士であれば、監査法人に勤務後はコンサルや税理士法人、事業会社等様々な選択肢がありますし、独立といった道もあります。
自分の人生にある程度決定権を持たせることができることが魅力ではないかと思います。

監査法人に就職できるか、実務要件を満たせるか

とはいえ、会計士としてキャリアを積んでいくためにも現実問題として30代の転職だと監査法人に就職できるかどうかというのもポイントになります。
なお、公務員のままの場合では、資格は評価されることはほとんどありません。
都庁なども会計士を採用していますが、あくまで実務経験が評価されているのであり、資格だけで実務経験が伴わないと効果は薄いです。

今は売り手市場ですが、30代後半で経理・財務系の経験もない場合、英語がビジネスレベルといった強みがない限りは、大手監査法人への就職は難しいのではないかと思います。
30代前半から中盤であれば、十分に可能性がありますし、30代後半であっても中小監査法人も選択肢にいれれば、需要と供給次第ですが、十分に可能性があります。
又、公務員としての経験が実務要件が認められるかどうかについては、実務経験(業務補助等)には、「業務補助」と「実務従事」があり、公認会計士の登録をするためには、2年以上の実務経験(業務補助等)が必要とされています。

地方自治体の業務は、実務従事(財務に関する監査、分析その他の実務に従事すること)にあたり、

(1)国又は地方公共団体の機関における、国若しくは地方公共団体の機関又は国及び地方公共団体以外の法人(※)の会計に関する検査若しくは監査又は国税に関する調査若しくは検査の事務
(公認会計士法施行令第2条)が実務従事として挙げられています。
Q&Aもあり、国税局で税務調査をしていた、地方公務員として財務監査や決算書類作成業務をしていた等の経験があれば認められるケースもあるようです。

Q 国又は地方公共団体の機関における実務従事の具体例を教えて下さい。

Aこれまで、国又は地方公共団体の機関における実務従事として業務補助等報告書の提出があった業務の実例としては、(1)国税局における税務調査の業務、(2)県庁における市町村の財務監査や地方交付税に関する検査の業務、(3)市役所における地方公営企業に係る決算書類作成業務や財務諸表の分析に関する業務等があります。

将来に大きく影響することなので、詳細はご自分で法令等を確認することをおすすめします。

又、今は昔と比較して試験の難易度が下がっていることもあり、学生合格がかなり多く、入社するとほんんどが年下の上司となります。
そこに耐えることができるか、気にならないかというのもポイントになるかと思います。

それでも会計士に興味を持って目指したいという場合は、会計士の予備校に資料請求して詳しい話を聞くとよいでしょう。

公認会計士試験のおすすめの専門学校・予備校 TAC・大原・東京CPAを徹底比較
公認会計士試験は範囲が膨大で独学で合格することは非常に困難といえる。公認会計士試験の専門学校にはどのような選択肢があり、どこが1番いいのか。TAC、大原、東京CPA等について授業・テキストの質、サポート体制、費用の観点で比較してみた。これから公認会計士を目指して専門学校を選ぶ方の参考になれば幸いだ。

又、公務員で会計士に合格したけど、監査法人に定期採用ではなく、中途採用を考えている方、監査法人以外のキャリアを考えているという方は、転職エージェントに話を聞いてみることをおすすめします。

公認会計士のおすすめ転職エージェント6選
転職エージェントが多数あってどれを使えばよいのかわからないという会計士向けに、転職活動した際の経験を踏まえて公認会計士のおすすめ転職エージェントを紹介したいと思います。総合型の大手と専門型のエージェントの違い、おすすめの転職エージェント、エージェントの選び方、注意点について解説していきます。

コメント