公認会計士大手予備校の1角である大原の公認会計士講座の評判について良い点、悪い点含めて取りあげた。
最初に要点だけ触れると大原の特徴として
・合格者のシェアトップ
・専門学校を併設して、全国に展開しており、校舎数が多い
・テキストはコンパクトで答練重視
なことが挙げられる。
大原の良い点
合格者シェア上位
公認会計士試験では、傾斜配点がとられているといわれている。
問題の価値は同じではなく、皆ができる問題が配点が高く、ほとんどできる方がいない没問は配点が少ないと考えられる。
そのため、合格者の占有率が重要となってくる。
大原では、累計合格者数ではTACに負けるものの、直近5年間の推移を見るとTACの合格者数を上回っている。
当然ながら、合格は単年度で判断されるため、累計合格者数には意味がなく、単年度の占有率が重要となる。
この点は上記の傾斜配点という公認会計士試験の特性を考えると大きな強みといえる。
なお、近年はCPA会計学院が合格者数を急速に伸ばしており、2021年度以降シェアトップとなっている。
大原は、直近のシェアでいうと3位となっているが、過去の指導経験や教材はノウハウが詰め込まれたもので、大きな外れはない専門学校とはいえるだろう。
年度 | 大原 | TAC | CPA |
2016年 | 406 | 385 | 95 |
2017年 | 482 | 352 | 121 |
2018年 | 486 | 357 | 223 |
2019年 | 470 | 360 | 357 |
2020年 | 399 | 401 | 359 |
2021年 | 397 | 289 | 510 |
2022年 | 334 | 410 | 606 |
2023年 | 308 | 345 | 786 |
※合格者数はTACHP、占有率は論文式試験合格者数から算出。
質問対応体制が充実している
又、講師が常駐しているため質問がいつでもできることがメリットでわからないことは質問したいという方には向いているだろう。
大原は、常勤の講師比率が90.37%(2018年12月1日時点)と9割を超えており、常駐比率が非常に高い。
そのため、いつでも質問ができ、疑問解決が速い、悩みをためずに勉強をすすめることができるというメリットがある。
又、質問対応講師一覧表が用意されており、担当科目ごとに講師名と対応時間がネット上で確認できる。
質問方法についても、職員室だけでなく、電話・インターネット・FAX等多様な方法で質問ができる。
テキストはコンパクト、講義数は充実
テキストは必要な情報がコンパクトにまとまっているCOMPASSというオリジナルテキスト、問題集、回答解説集と短答合格専用の問題集である肢別チェック、論文合格のための用語、定義をコンパクトにまとめたポケットコンパス等合格に必要なツールがそろっている。
オリジナルテキストは毎年改訂され、特徴としては、基本的な知識を中心にコンパクトにまとまっており、足りない知識は答練で補完する形式となっている。
分厚いテキストをこなすよりも、細かい知識は答練で少しずつ覚えた方がよいという方には向いているだろう。
答練については、レクチャーの単元、項目ごとにアウトプットのミニテストを実施したり、計算科目について1時間程度のステップ答練、本試験の出題傾向を踏まえた答練等充実している。
講義数はおおむね440回と圧倒的なボリュームになっている。
量が多ければいいわけではないが、これだけこなせば大丈夫という意味で安心だろう。
一番だめなのは、色々と手を広げて、どれも中途半端に終わってしまうことである。
カリキュラムは、まず計算系の科目を固めていくやり方で計算を固めた後に理論系の科目に移っていく方式だ。TACは計算と理論を並行して進めるやり方なので、自分にどちらが向いているか考えるとよいだろう。
私の場合は、まず時間がかかる計算科目を固めてから、理論に移った方が理論を勉強している時に、「ああ、計算科目でやったあれね」という風に理解が深まるので、向いていたように思う。
校舎数が多く、自習室も充実
大原は全国で40校に展開しており、例えば普段の授業は近くの校舎で受けて、模試の時は本番同様の雰囲気で練習するため、大規模な校舎で受けるといったことも可能で、メリットは大きい。TACは、直営校が22校、提携校が14校なので、実は大原の方が校舎数は多い。
社会人の方の場合は、急な異動で転勤になってしまった場合でも転校制度があり、学習を続けることができるというメリットがある。
又、地方で勉強している方には、大手しか選択肢がない場合もあり、その際にはありがたい存在だろう。
家で中々勉強に集中できない方やモチベーションが維持できない方にとっては自習室の豊富さが重要な要素になるが、上記のように校舎数が多いことで自習室も豊富に用意されおり、オンラインで自習室の開放状況を確認できる。
気分やその時の都合によって自習場所を変えたいという方にとってはメリットといえるだろう。
但し、専門学校を併設している校舎は、自習室のそばで学生が雑談しており、うるさいこともあるし、自習室の環境もパーティションで区切られており、個人のスペースが確保されているところや普通の教室を開放しているところ様々だ。
学生が休みの夏休み以外に一回校舎を訪問して、実際の環境を確認するとよいだろう。
大原の悪い点
講師は必ずしも公認会計士ではない
TACと違って講師は必ずしも公認会計士又は公認会計士試験の合格者ではない。
この点は講師は会計士試験合格者主義をとっているTACとは異なっている。
もちろん同じ試験に合格した経験があることはプラスに働くが、例えば、企業法であれば、弁護士、租税法であれば税理士の方の方が詳しい可能性が高いので、試験に受かっていなくても担当科目に特化して専門性があれば問題なしという方針はそこそこ合理性があるといえると思う。
個人的には監査論以外は、その分野のスペシャリストであれば合格者に限る必要はないと思うので、問題ないだろう。
監査論だけは、監査は公認会計士の独占業務であり、実務経験があった方が話が例を交えた具体的なものになるため、監査実務経験がある公認会計士の講師の方がいいと思う。
実務経験がない学生や大学講師だとよっぽどうまく教えないとイメージがわかず、つまらないものになると思うので、ここだけは注意した方がいいだろう。
デメリットと裏返しではあるが、公認会計士合格者に限定しない分、常勤主義となっており、質問がしやすい体制になっている。
受講料・料金について
例えば、2024年合格目標の入門1.5年ウィンター初学者コースの場合は以下のようになっている。
以下は完全初学者の場合なので、簿記を事前にもっていればより安くなる。
簿記をもっているかや学習期間により料金は変わってくるので、細かい料金はパンフレットを確認してほしい。
学習方法 | 受講料 |
通学(映像・教室) | 77万 |
Web通信講座 | 75万 |
DVD通信講座 | 84万 |
上記のように、概ね75万円程度となっており、通学とWebで差はない。
他の予備校と比較すると大手TACと同水準、CPAよりは少しだけ高い、クレアール、LECと比較すると高い値段になっている。
Web通信 | DVD | 通学(又はビデオブース)講座 | コース名 | |
大原 | 750,000 | 840,000 | 770,000 | 2024年目標入門1.5年オータム初学者合格コース |
TAC | 760,000 | 840,000 | 760,000 | 簿記レベルA(簿記・会計初学者の方) |
CPA | 622,000 | – | 710,000 | 1.8年スタンダードコース |
LEC | 278,000+α | – | 298,000+α | 2023年短答・論文合格コース |
クレアール | 520,000 | 570,000 | – | 1.5年合格全力投球コース |
他の専門学校との料金面の比較は以下記事にて行っている。
関連 公認会計士の予備校にかかる費用の比較
ただし、料金はもちろん大事なものの、1年は早く合格できれば簡単に回収できる差であり、料金よりも自分にあっているかを優先した方がいいだろう。
なお、DVDかWeb通信かについて、個人的な考えをいうとDVDは形に残り、受講後に見直すことができるという安心感があるものの、そもそも後になって見直した人はあまりいないのではないかと思う。
再度見直すような時間があるのであれば、問題を解いた方が効果が高いし、DVDよりも倍速再生でき、持ち運べる音声の方が便利である。
Web通信についても同様に見直すことはでき、DVDのヤフオク等での処分価格もWeb通信とDVDの差額には到底及ばず、回収は難しい点、Web通信の方がタブレットで移動時間中に視聴できたりと利便性が高い点を考慮するとWeb通信とDVDの2択であれば、Web通信一択かと思う。
まとめ
上記のように大原の主な特徴として
・専門学校を併設して、全国に展開しており、校舎数が多い
・合格者のシェアトップ
・テキストはコンパクトで答練重視、講師は常勤主義
・自習室や質問対応は充実
・料金は、業界大手と同程度(80万程)
なことが挙げられる。
とはいえ、実際の自習室の環境や休憩スペース、校舎の清潔さは実際に見てみないとわからない面もある。
受講料が高額なこともあり、資料請求したうえでまずは実際に校舎を見てみることをおすすめする。
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