会計士が投資ファンド(PEファンド・ベンチャーキャピタル)へ転職するためには?

会計士が投資ファンド(PEファンド・VC)へ転職するためには? 投資ファンド

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監査法人等から公認会計士が転職する場合、監査法人からの転職で給与が上がると見込まれる転職先の一つが投資ファンドです。今回は投資ファンドへの転職についてPEファンドとは何か、給料はどの程度か、転職するにはどのような経験が求められているのか書いてみました。

投資ファンドとは?PEファンド・VCとは?

よくTV等で耳にする投資ファンドのイメージは村上ファンド等ハゲタカのイメージが強いと思います。どちらかとマイナスのイメージがある投資ファンドですが、投資家から資金を集めてファンド(基金)とし、株式や債券、デリバティブ等様々な投資対象で運用を行い、得た利益を出資比率に合わせて投資家に分配するビジネスを行っており、世の中に役立っている立派な仕事です。

投資ファンドとは幅広い意味で使われている用語ですが、投資信託のような公募型、投資ファンドと呼ばれる私募型にわかれます。
今回紹介するのは私募型でその中でもPEファンド、VC(ベンチャーキャピタル)になります。

PEファンドはPrivate Equity Fundの略で上場企業ではなく、未上場企業に投資し、経営支援など経営に関与することで企業価値を高め、IPOや売却によって利益を得ることを目的としたファンドのことを指します。

投資ファンドってどんな仕事をしているの?給料は?

投資ファンドには、実際に企業への投資の意思決定に関与するキャピタリスト職(いわゆるフロント)と、経理やファンド管理などの後方支援を行うバックオフィス職があります。

給与は、当然ながら実際にお金を稼いでくるフロントの方が高いですが、バックオフィスであっても投資ファンド自体の給与が高いため、通常の大手事業会社と比べると高くなります。

キャピタリストの仕事と給与

ファンドの仕事の流れは投資案件のソーシング(開拓・検討・交渉)→エグゼキューション(投資実行)→EXIT(投資先の売却)といった流れで進みます。

キャピタリストの仕事は、投資先の財務分析、投資検討における事業性評価・バリュエーション、投資後の投資先への経営支援等ハンズオン業務が主になります。
アソシエイトレベルの場合は、投資案件のスクリーニング、提案書作成、バリュエーション業務といった業務内容になります。

ハードな仕事になりますが、年収は800万~1,600万程度と高い水準です。

フロント業務の魅力は、ファンドのパフォーマンスに連動するボーナスも大きいため、イグジットが成功し、高額なキャピタルゲインを実現した場合、上記ベース給とは別に業績連動ボーナスが出ることもあります。(数百万~1,000万近くになるケースもあるそうです)

①投資先のモニタリング

既存投資先企業の財務分析モニタリング、財務数字のトラッキング、投資計画に沿っているかのチェック等既存の投資先のモニタリングが業務内容の一つになります。

こちらはバックオフィスがファンド管理と兼務で担当しているケースもあります。
財務諸表を読める会計士にとってはイメージがしやすく、とっつきやすい仕事かと思いますが、投資先から情報が上がってこないファンドもあるようで、ファンドによってはコミュニケーション力が問われるようです。
実際面接を受けたことがあるファンドでも現場からの情報が上がってこない、あげてくれないことが問題となっていたようで、どのように解決するか質問されました。

②新規投資の検討・Valuation

投資検討のために、様々な情報を集めて仮の事業計画を作成し、それをベースに株式をバリュエーションして想定リターンが出るかどうかを計算をするのがアナリストクラスの仕事になります。

その投資の検討の前にはそもそも投資対象を探さなければならず、投資案件の開拓が大変な業務になり、シニアクラス以上になると分析だけではだめでソーシング力が問われます。このあたりは会計士が苦手とするところかと思います。

③投資後の投資先への経営支援等

投資先のバリューアップのため、幹部会議・株主総会に同席したり、報告業務を行ったり、

投資先企業へのもろもろの財務・会計的アドバイス、監査役として投資先企業へ経営参画することもあります。

又、株式公開を目指すクライアントを抱えるベンチャーキャピタルなら、投資先の株式公開の支援も行うので、公認会計士の資格は高く評価される傾向にあります。
ただ、ハンズオンで投資先に入って、業務の仕組みを考えたりといったことを行えるファンドは少数派で、会計士としてのスキルを活かして、投資先に入って、内部統制を構築して…といったことを想像するとギャップが大きいかもしれません。

バックオフィスの仕事と給与

上記のフロント業務以外会計士が募集される際は経理やファンドの管理が中心となるケースが多いです。

投資ファンドは規模が小規模であることが多いので、取締役会、委員会の運営や経営計画の策定、評価といった経営管理業務や規模によっては総務、IR等を兼務するケースもあります。

又、バックオフィスといってもミドルバック業務である既存の投資先のモニタリング、経営層への報告資料の作成、フロントメンバーからの会計・税務への質問対応といった業務が含まれることもあります。私が応募したところは、ポートフォリオの管理とフロントメンバーから情報を吸い上げてリスクや業績を経営層に報告したりといった点も要求されていました。

バックオフィスは、フロントに比べると給与は劣りますが、30歳で700万~1,000万程度と事業会社に比べると高い水準になります。ファンドのモニタリングが仕事に含まれるともう少し上の水準が狙えます。

フロントに比べるとプレッシャーが少ないので、落ち着いて働きたい方には向いています。
ファンド界隈は離職率も高いですが、エージェントによく聞いてみるとフロントは人材の流動性が高いですが、バックオフィスは落ち着いていますという会社も多いです。

投資ファンドに転職するためにはどうすればいいのか

投資ファンドは会計士に人気があり、選考ハードルが高いため、実際にPEファンドに転職できる公認会計士は多くはありません。

PEファンドは株式市場が好調な時には求人数が増加し、相場が低迷すると求人が減るという特徴があります。

監査法人で監査経験のみの方がPEファンドに転職できるのは一般的に20代のポテンシャル採用のみと考えた方がいいでしょう。
又、少数精鋭で募集人数も多くはないため、常に業界動向をウォッチしておく必要があります。

募集要件からみる必要なキャリア

実際の募集要件からどのようなファンドに転職するためにはどのようなキャリア・経験が必要なのかみてみましょう。

・投資銀行でのアナリスト3年程度以上の経験(外資大手PEファンド)

・投資銀行、金融機関、M&Aブティック、監査法人・FAS等におけるM&A業務経験(事業会社系プリンシパル投資ファーム)

・CF分析等、投資のベースとなる財務分析経験(官民ファンド)
・総合商社で事業投資経験者、事業会社でのM&A業務経験者
・英語でビジネスが遂行できること(外資系PEファンド)

まず一番にPEファンドでの業務経験が重視されます。続いて、投資銀行、金融機関、FAS等でのM&A経験です。

募集要項をみると監査法人での監査業務経験(必要経験年数は3年~5年程度)が要件として挙げられていることもあります。
FAS系コンサルティングファーム・日系証券会社でのM&A経験者が要件となっているケースも多いですし、大手コンサルティングファームでの戦略コンサルティング・再生コンサルティング経験者等が挙げられていることもあります。総合商社での事業投資経験者もニーズが高いでしょう。
監査法人勤務経験はデューデリジェンス経験や数字の感覚に対する素養が評価されてのポテンシャル採用となるケースが多く、アナリストからのスタートとなるケースが多い印象です。
(アナリストとはいっても監査法人のシニアクラス程はもらえるケースが多いです。)

ポテンシャル採用は20代から遅くとも30歳前半までなので、それ以降はFASでM&Aの経験を積んでから応募した方がよいかと思います。
周りでファンドに転職したケースをみてみると学生合格で監査法人で数年経験を積んで、20代後半でファンドに転職した方や20代中盤で戦略コンサルティングファームに転職して、その後再生ファンドに転職した方、監査法人からFASに転職して、M&Aの経験を積んだ後、日系の投資ファンドに転職した方がいました。
又、監査法人で監査をやっていても監査のジョブが終了後にDDのヘルプにいったり、事業再生ができる部署へ異動希望をするという手もあります。

株式市況がよく、低金利の現状はポテンシャル採用が積極的に行われているタイミングでチャンスといえます。

英語力は国内の未上場会社に投資する場合は必要ありませんが、海外に投資する官民ファンドや外資系のファンドの場合、ビジネスレベルの英語力が求められます。

会計士の転職事例からみる必要なキャリアと転職方法

監査法人から投資ファンドへ転職した方のキャリアの一例をみてみましょう。

例1:大手監査法人で監査業務を3年間経験後、PEファンドに転職、その後PEファンドに在籍しつつ、複数企業の社外監査役に就任している。

例2:大手監査法人で監査業務を2年程経験後、日系証券系のPEファンドで8年程デューデリジェンス、事業計画の策定、投資の実行支援、ハンズオンでの経営支援等経験後、外食系事業会社へ転職。

会計士がファンド・事業会社に転職して成功する秘訣 会計士という保険があるからこその積極的なチャレンジ:インタビュー
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上記の例からすると監査3年程経験後、年齢的に20代中盤であればポテンシャル採用として転職は可能であるとわかります。

市況や学歴によっては難しくなりますが、FASのキャリアを1回挟むことで道が開けることがあります。私の知り合いの中にPEファンドへの転職を希望したものの、M&A経験が無いため、PEファンドへの転職は叶わなかった方がいました。

そこであきらめずにFASへの転職を決意し、M&Aの経験を積んだ後、再度PEファンドへの転職活動へチャレンジしました。
結果、監査とM&Aの経験を評価され、独立系PEファンドへの転職を決定したという方がいました。

投資ファンドは、求人数が少なく、エージェントによって扱っている会社が違うので、複数のエージェントに登録して動向をチェックしておく必要があります。

おすすめは独立系のエージェントが多く登録されているビズリーチでファンドに強いエージェントとコネクションを作っていい案件が入ってきたら連絡をもらえる体制にしておくことです。

ビズリーチは、一定以上のキャリアがあると無料会員で十分に使えるため、会計士の転職だと使えるサイトになります。

又、実際につかってみて意外とファンド系の求人の紹介がされたのが、マイナビ会計士になります。
マイナビ会計士は大手マイナビが会計士に特化して運営しているエージェントで官民のファンドや大学発のベンチャーキャピタル等の求人を複数紹介されました。
その他、コンサルや金融関係の転職に強いムービンストラテジックキャリアや金融関係の転職に強いKOTORA等の利用もあわせて検討するとよいでしょう。

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