公認会計士としてのキャリアは、監査法人からスタートして、一般事業会社に転職する場合が多いですが、一般事業会社から監査法人への転職例は多くはありません。
事業会社から監査法人への転職には大きく二つのケースがあるかと思います。
監査未経験の事業会社会計士の監査法人への転職と監査法人への出戻りです。
ファーストキャリアが一般事業会社の場合
ファーストキャリアが一般事業会社の場合にも大きく3つのケースがあると思います。
不本意ながら一般事業会社に就職した場合
一つ目は不本意ながら一般事業会社に就職したケースです。
会計士の就職氷河期となった2009年~2013年頃では、監査法人に就職することができずにやむ負えず、事業会社に就職する方もいました。
その後、会計士である以上、やはり独占業務である監査経験を積んでおきたいということで監査法人に転職する方も監査法人の就職状況が改善してきたことから増えています。
この場合は、監査法人の初任給であっても給与があまり変わらないケースもあり、転職する際に収入面がネックになることはないでしょう。
又、補習所や登録費用を負担してくれない企業も中にもあるようで、就職が厳しい中拾ってもらった恩はあるとは思いますが、我慢して働く必要はないと思います。
キャリア的にも事業会社で一社員として働くよりも監査法人勤務をして、経理経験もあるということで次の転職の際に経理経験も活きてくると思うので、監査を経験したいのであれば、転職するのは、選択肢として十分考えられるでしょう。
在学中に会計士試験に合格し、新卒で一流企業へ就職した場合
次に在学中に公認会計士試験に合格し、新卒で一流企業に入ったパターンです。
有名なところだと新日鉄やUFJ銀行のコース別採用等が新卒の会計士対象に採用をしていたように思います。又、総合商社にも一定数就職しているかと思います。
この場合は、監査法人に就職するよりも収入面では高くなるケースが多く、年収が理由で転職したいと思うケースは少ないのですが、監査を経験していないことに引け目を感じたり、普通のサラリーマンとして働くことに物足りなさを感じる方や転勤や異動ありの総合職としての働き方に疑問を持つ方、独立をしたいと考える方もいます。
この場合、数年経験を積んだ後だと監査法人に転職しようとするとそれまでの経験が考慮されずに1年目の監査法人の給与になってしまいます。
上記のような企業に就職している場合、在学中に合格しているケースがほとんどで、同年度合格の同期がシニア等になっている中でなぜ1年目の給与で働ければならないのかという点がネックになると思います。
その場合、もし辞める意思があるのであれば、ダメもとで監査法人へ出向できないか確認してみるとよいと思います。
中には、監査法人から出向を受け入れ、監査法人へ出向で経験させてくれる会社もあると聞いたのでもし監査法人に移る意思が強いのであれば聞いてみるのも手でしょう。
企業と監査法人の力関係が比較的強い大手企業の方が可能性があると思います。
もし転職したい理由が、転勤や異動等を受け入れ、総合職として働くのは向いておらず、会計の専門職として働きたいというのであれば、収入を下げずにキャリアチェンジする方法があります。
監査法人の中でも中小監査法人は、ある程度給与が柔軟なので、大手よりも上のポジションで転職できる可能性があります。
又、会計系のアドバイザリーに就職するのも一つの手です。
Big4のアドバイザリーは、経理経験がある方やプロジェクト対応等の経験がある方を中途採用しており、その際の職位はシニアやマネージャーも十分あります。
Big4のアドバイザリーに入れば、系列の監査法人へ出向して監査をできる可能性は事業会社よりはかなり高いので、このようなルートもあります。
社会人で働きながら合格した場合
社会人で働きながら合格した場合もこのまま今働いている会社で働きつづけるのか、それとも監査法人へ就職するのか迷うかと思います。経理で働いているわけではなく、別の職種で働いていて、会計士を目指したケースもあると思うのですが、この場合も監査法人へ就職する場合は、経理であろうと営業であろうと職歴は一切考慮されずに新卒と同じ給与なので、そこを受け入れられるかどうかでしょう。
又、監査法人の1年目として扱われるため、チーム内の文房具を用意したり、調書を整理したりといった雑務も発生しますし、上司も年下となります。
ただ、初任給の話は有名でそれでも会計士を目指したのは、現状の職務内容に不満があったり、将来に不安があったりと何か理由があったはずです。
その理由を考えてみて、監査法人へ就職するのが目標に近づくのであれば、短期間の給与ダウンはしてでも監査法人に就職した方がいいでしょう。
この場合も給与が気になるのであれば、会計アドバイザリー等に転じる道もあります。
監査法人への出戻りの場合
それなりに多いのが、監査法人への出戻りです。
通常の事業会社の場合、多少は例が出てきたとはいっても昔勤めていた会社に出戻るというのは、会社側も労働者側も抵抗がありますが、監査法人は変な辞め方をしていない限りは出戻りに寛容です。大手だと辞めたOBのネットワークもあります。
実際に私も辞めた監査法人の方と今でも会うことがあります。
出戻りができなかったケースとしては、監査法人の繁忙期直前にチームに迷惑をかけて辞めたケースでパートナーから待ったが入ったケースを聞いたことがあります。
辞め方は大事ですね。
又、必ずしも同じ監査法人に戻る必要はありません。
別のBig4に転職するケースも多く存在しますので、その場合は別の監査法人に転職しましょう。
出戻りの理由としては、
・事業会社の転職したものの、監査以上に単調な作業が多く、退屈だった
・日系企業で朝礼があったり、ランチは上司といったり等風土が合わなかった
・給与が想像以上に上がらず、生活水準が落ちた
・ベンチャーに就職したが、入社前に聞いた話と大きく異なる状況だった
・キャリアチェンジをしたが、うまくいかなかった
といった転職失敗事例があります。
特に自分で決算書を作ってみたいと思って一般事業会社の経理に転職して、最初は新しくやる仕事で新鮮味を感じていたものの、1年経つとルーチン業務が多く、刺激を感じなくなってきた、成長している実感がないというのがよくあるパターンです。
又、監査法人は専門職で構成されていることもあり、事務所勤務の場合は、朝の時間もルーズで、縛りが弱い会社です。監査法人は比較的自由という事実に、特に前職がない方は気が付かないこともあり、社風になじめないという方も多くいます。
このような場合に出戻りという手段があり、リスクヘッジができるのが会計士の魅力の一つだと思います。
出戻りの場合は辞めた時の職位になることがほとんどです。
特に事業会社に転職した場合は、その経験は評価されず一体その数年間はなんだったんだという話になるため、事業会社経験が長ければ長い程抵抗が強くなります。
そのまま監査法人に残っていた人がマネージャー等になっている中でシニア等で転職しなければならないのはきついのではないでしょうか。
これも中小監査法人に転職するか、会計アドバイザリーにコンサルタントとして転職することで年収面はクリアできることがあります。
監査法人を辞めたときにも監査に対してつまらないといった理由があったはずで、また監査に戻るのは、同じような状態になる可能性があります。
そこでおすすめなのが、監査法人のアドバイザリー事業部や会計コンサルへの転職です。
特に、会計アドバイザリーの場合で決算早期化や連結決算支援等いったオペレーション系の業務は、監査経験と経理経験があることでパフォーマンスの向上が期待できるかと思いますし、収入面も監査法人よりも高めです。
事業会社から監査法人への転職まとめ
事業会社から監査法人へ転職する場合、監査未経験であれば、職歴が考慮されずネックになる可能性があります。
非常に勿体ないので、回避する方法として
・監査法人のアドバイザリー事業部
・会計コンサル
・中小監査法人
への転職といった方法を紹介しました。
監査法人に転職する場合は、ケースにより転職方法が異なってくると思います。
出戻り転職の場合は、まずは先輩や上司に個別に連絡をとってみるとよいでしょう。
出戻りではなく、他の監査法人に転職する場合は、転職エージェントの活用がおすすめです。
ホームページで公募している案件以外の非公開案件を扱っていますし、給与等の条件の個人でやりにくい調整もやってくれますので、うまく活用しましょう。
監査法人の転職であれば、会計士専門のエージェントか会計士中心に転職支援している特化型のエージェントがおすすめです。
■マイナビ会計士
マイナビ会計士は、大手監査法人、中堅監査法人へのインタビューやオフィス紹介等をやっており、採用イベントも時々実施しています。
大手監査法人のみならず中堅監査法人への転職、会計コンサルにも使えるエージェントです。
大手監査法人の転職であれば、実はどのエージェントを使っても紹介される求人自体には、大きな差はありません。(中小監査法人とは、エージェントによって取引があるかどうかで変わってきます)
その中でもマイナビ会計士は大手のマイナビが会計士専門で立ち上げたエージェントであり、サポートが充実しているので、おすすめできるエージェントです。
マイナビのプロモーションを含みます
■ジャスネットキャリア
又、ジャスネットキャリアも会計士や経理財務に特化しているエージェントになります。
大手監査法人のみならず、多くの中小の監査法人と取引があり、おすすめできます。
特にマイナビでは扱っていないような小規模監査法人の求人もあります。
■Ms-japan
Ms-japanを会計士・税理士等の士業や管理部門に特化したエージェントになります。
大手監査法人、中堅監査法人、会計コンサルと取引があります。
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