20代の公認会計士であれば、終了考査に合格して会計士登録した時点で1回は転職について考えたことがあるのではないでしょうか。20代後半の会計士は、ある程度の経験がありかつ若手の部類に入るということで最も転職市場で需要の高い年代でもあります。
今回は、20代の公認会計士の転職の特徴、人気のある転職先と転職方法ついて書きました。
20代の会計士転職の特徴
20代の公認会計士の場合は、学生合格とした場合、22歳で入社、25歳で公認会計士登録の方が多いのではないかと思います。
監査経験が3年程であれば、転職先にもよりますが、経験やスキルを買って採用というわけではなく、ポテンシャル採用のケースが多くなります。いわゆる第二新卒採用です。
3年程の経験の場合、公認会計士としての経験は多くはありません。
採用する側の企業もそのことはわかっており、採用する際に重視されるのは、これからの伸びしろであるポテンシャルです。
ポテンシャルは会計士に合格しているため、ある一定程度は他の無資格の応募者に対して有利になります。
その他、働く姿勢やコミュニケーション能力、メンタルの強さ等が考慮されます。
会計士の場合は、新卒から先生といわれていた方も多いので、面接では、周りから育ててみたいと思わせるような素直さや一緒に働きたいと思う人当たりのよさが重視される傾向にあります。
勤務地についていうと転勤なしの条件での転職を望む会計士が多いので、地方転勤可の条件だと選択肢が広がります。
20代後半で5年~7年程度の経験があるとスキルを買われての転職も増えてきます。
20代中盤でまだ経験が浅い方で書類選考が中々通らない、厳しいと考えている方は焦らずにじっくりと転職活動を続けましょう。
複数のエージェントから話を聞いた限りではある程度の経験がありかつ若手の部類に入る20代後半~32歳程が一番需要が高いようです。
その他、あると有利なスキルとしては、やはり英語です。
英語で会計の議論を現地と直接行えるレベルの人材は増えてきているとはいえ、まだまだ足りないので、需要があります。
20代であれば、日系企業であれば実務経験があまりなくてもTOEIC800点を超えていれば、ある程度は評価されます。外資系の場合は、TOEICの点数よりも実際にしゃべれるかが重視されます。
20代会計士の年収
平成29年賃金構造基本統計調査で25 ~ 29歳の公認会計士・税理士の年収が開示されているので、周りの20代後半の会計士がどの程度もらっているのか相場を把握しておきましょう。
25 ~ 29歳の20代後半男性公認会計士の年収
全体 | 大手* | 中堅 | 中小 | |
所定内給与額 | 39.6万 | 41.5万 | 37.3万 | 26.3万 |
残業手当等 | 20.0万 | 21.9万 | 22.1万 | 2.0万 |
月収 | 59.6万 | 63.4万 | 59.4万 | 28.3万 |
賞与等 | 166.1万 | 183.7万 | 133.4万 | 59.7万 |
平均年収 | 880.8万 | 945.0万 | 845.6万 | 399.6万 |
勤続年数 | 5.4 | 5.8 | 4.5 | 2.9 |
残業時間 | 59 | 63 | 73 | 11 |
人数 | 183 | 145 | 20 | 18 |
構成比 | 100% | 79% | 11% | 10% |
*大手:1,000人以上 中堅:100人~999人 中小:10人~99人と便宜上表記しています。
20代後半の男性会計士の場合、全体では800万後半、大手に限定すると945万程になっています。
厳密にいうと賃金構造基本統計調査は公認会計士・税理士の年収ですが、税理士法人については大手であっても従業員数が1,000人を切っていますので、大手はほぼ公認会計士の年収とみていいでしょう。
基本給に相当する所定内給与額は大手シニアである程度の年次を重ねた40万程とほぼ実態と同様になっています。
ただ、残業時間をみてもらうと全体で59時間、大手で63時間となっているように残業時間で稼いでいる面があります。
上記を単純に計算すると大手の場合は、ベース給与は680万程、残業代が260万程となっています。
ベース給の680万程は、ある程度の年次を重ねたシニアの給料とほぼ一致します。
流石に現状ではこれほどの残業はさせてもえないので、おそらくですが、調査対象月が決算繁忙期の4月、5月を含んでいるのではないかと思います。
この繁忙期による異常値を補正してやります。
通常期が四半期を含めて残業が30時間と仮定し、期末の2カ月程だけ60時間とし、残業時間と残業代から算出した単価で理論年収を計算すると全体で783万、大手で828万程になります。
25 ~ 29歳の20代後半女性公認会計士の年収
全体 | 大手 | 中堅 | 小規模 | |
所定内給与額 | 31.8万 | 31.3万 | 40.3万 | 22.4万 |
残業手当等 | 14.2万 | 17.1万 | 10.3万 | 3.1万 |
月収 | 46.0万 | 48.4万 | 50.5万 | 25.5 |
賞与等 | 118.3 | 160.9 | 0.0 | 47.7 |
平均年収 | 669.8万 | 741.5万 | 606.5万 | 353.9万 |
勤続年数 | 3.6 | 4.4 | 0.5 | 4.1 |
残業時間 | 50 | 60 | 34 | 21 |
人数 | 56 | 39 | 10 | 7 |
構成比 | 100% | 70% | 18% | 13% |
20代後半の女性会計士の年収は700万未満と男性の場合と比べると抑えめになっています。
残業時間はほとんど変わらないので、勤続年数がやや短くシニアに昇格していない人が多いのが要因でしょうか。
20代会計士に人気の転職先
20代の会計士が転職を考えるのであれば、選択肢はかなり広いです。
代表的な転職先として以下が挙げられます。
・大手法人、中堅監査法人
・大手税理士法人、中堅税理士法人
・一般事業会社(経理・財務、経営企画、IR、税務)
・金融機関(公開引受、内部監査、投資銀行、プライベートバンカー)
・コンサルティングファーム(戦略、FAS、IT系)
・ブティック型の会計コンサル
・PEファンド、ベンチャーキャピタル
20代の会計士に人気の転職先なのが、事業会社やコンサルティングファームです。
事業会社も大きく分けて、大手日系事業会社、ベンチャー、外資に分かれますが、最近20代の若手会計士で増えているのが、ベンチャー企業でのCFO等への転職です。
ベンチャー企業には現在の資金が有り余っている状況からマネーが潤沢に供給されている点や監査法人が人不足であり、いつでも出戻りできるという安心感もあって、リスクをとっている方が増えているのではないかと思います。
しかし、このマネーが潤沢な状況がいつまで続くかわからず、又監査法人の人手不足も解消されてきており、一部の階層では、人が余ってきているところもでてきているようなので、逆回転が起こったときのリスクについて認識しておくことが必要でしょう。
又、規模にもよりますが、経理だけでなく、人事や総務といった管理部門全体をみる必要がある可能性もあり、雑多な仕事内容になる可能性があることも認識しておきましょう。
ベンチャー企業で成功した方だけが表にでてきていて、肩書等をみてキラキラしている印象もあるかもしれませんが、印象に騙されないようにしましょう。
ベンチャーに転職したものの、数カ月でこんなはずでは…と監査法人に出戻ってくる方もけっこう多いようです。出戻りが可能なだけ、リスクは低いともいえますが。
又、ワークライフバランスや福利厚生、企業年金が充実しているということで日系大手の経理部門への転職も根強い人気があります。
目先の給与はやや下がりますが、長い目でみて判断して転職するという草食タイプの会計士が多い印象です。
その方の学歴では入社が困難であろう総合商社等の有名企業に会計士としての経験を活かして中途入社するという方もいます。
金融部門や国際部門の会計士に人気があるのが、外資系のバックオフィスへの転職です。
英語を活かした転職で給与が上がることが多いため、給与を重視する若手会計士には人気があります。
又、2019年現在、20代の方はおそらく監査法人の需給が売り手市場の時に採用され、監査法人の労働環境もスタッフクラスに限れば、かなり改善されてきているのではないかと思いますが、専門職として働く以上、残業が規制されてしたくてもできないというのは、成長という面では不満に感じている方もいるかと思います。
そのような上昇志向が強い方に人気があるのがコンサルファームへの転職です。
在学中に合格し、監査法人入社後、2年~3年で転職する方は、高学歴な方が多く、戦略コンサルへの転職が多い印象です。
戦略コンサルでは監査と視点も求められることも違いますし、監査をやっていかないのであれば最低限の実務経験で転職するという考え方なのでしょう。
私の知り合いでもいますが、仕事は大変ですが、非常にやりがいを感じているようです。
1点注意するともっとも転職しやすいのは20代の内ですが、自分の目指す方向性が見えていない中でただ、「今の環境が合わない」という理由で転職活動をして、「内定が出たから」という理由で転職をしても失敗する傾向にあります。
若いうちはそれでも大きな問題はありませんが、歳を重ねてくると過去の転職回数が多い転職者は、転職の理由をきちんと説明できないとまた転職する可能性がある人やキャリアプランがないいい加減な人と面接者には映ります。
なぜ今自分が転職をする必要があるのかをきちんと見極めた上で転職活動をしましょう。
具体的には、今20代であれば、40歳程度までのキャリアプランを書き出してみて、どのようなスキルセットを備えていてどの程度のポジションにいたいのか、どの程度稼いていたいのか、それを実現するために自分に足りないことは何なのかを書き出してみてください。
そのうえで、監査法人や今の職場で実現が難しいことであれば、転職活動をするとよいでしょう。
20代の公認会計士の転職方法とおすすめ転職エージェント
公認会計士が転職する場合、クライアントから誘いを受けてや知り合いのつてで転職するリファラル採用がリスクが低いのですが、20代の公認会計士で監査のみをやってきた方ですと中々そのような人脈はないかと思います
そのような場合には転職エージェントを使うことをおすすめします。
自分の求めるキャリアと実際に足りない点を客観的に把握するのにも役に立ちます。
・自分のキャリアを第3者に話すことで自分を客観的に見れる
・非公開求人に応募できる、企業の内情について情報収集できる
・同年代の会計士がどのような転職をしているのか情報収集ができる
といったことができる点が挙げられます。
マイナビ会計士
20代、30代の公認会計士の転職に力を入れています。
非公開の求人数だけを比較するとリクルートやDODAに劣るかと思いますが、面談をしていてリクルートの方よりも会計士の業務内容を熟知しており、希望の条件や応募状況等を汲み取った上で好みに合った求人を紹介してくれます。
求人数が多い総合系転職エージェントと会計士の転職に強い会計系エージェントのメリットをバランスよくとったエージェントといえます。
マイナビのプロモーションを含みます
MS-JAPAN
周りにも使っている方が多かったエージェントです。
ビズリーチ
ビズリーチは登録しているエージェントや企業からヘッドハンティングを受けることができるハイクラス向けの転職サービスサイトになります。
20代前半で第二新卒枠というよりも20代後半で公認会計士登録して実務経験が5年以上はある方が使うことをおすすめします。
なぜなら経験が3年以内程度だとスキルを活かしてのスカウトというのがほとんどないためです。
年収2,000万を超えるような案件はあまりなく、年収800万~1,500万の案件が多いイメージです。
ここで特定業界に強いエージェントを探すのも手かと思います。
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