前回、監査法人からの主な転職先について紹介しましたが、今回は公認会計士のコンサルティング会社への転職に焦点を当てていきたいと思います。
コンサルティング会社といっても戦略系のコンサルティングやIT系のコンサルティング、会計系のコンサルティング等あります。
今回は、会計士の戦略コンサルティングや総合コンサル及び会計コンサルへの転職について触れたいと思います。
会計士がコンサルに転職する理由
会計士がコンサルに転職する理由としてよく挙げられるのが、過去の数字の監査ばかりで未来の経営や収益にインパクトを与えられない、社会の役にたっているという実感を得られないという点です。
クライアントにアドバイスができない、感謝されるというよりも煙たがられるといった業務特性も監査にやりがいを感じられない原因として挙げられることが多く、より直接クライアントに貢献し、感謝されるコンサルに転職したいという会計士が多いです。
又、独立を目指している会計士もコンサル経験を積むと独立後の業務の幅が広がるため、コンサルを挟んで独立する方もいます。
戦略コンサルティング
戦略コンサルの業務内容は、もちろん監査経験が活きる面もありますが、直接監査経験が活きる仕事ではありません。
それ以上に新たに学ぶべき事項があり、キャリアチェンジになるため、チャレンジできるのは年齢的に若い時になろうかと思います。
ハードワークですが、通常の監査法人勤務の会計士よりも高い水準の報酬が得られることが魅力です。
人材のレベルも監査法人よりも高く、少数精鋭の組織です。
又、在学中に合格した方の中には最初から監査法人にはいかず、新卒で戦略コンサルへ行く方も少数ながらいました。
企業例
ボストン コンサルティング グループ(BCG)や
マッキンゼー&カンパニー、A.T.カーニ―、
ベイン・アンド・カンパニー、ローランド・ベルガー
ブーズ・アンド・カンパニー、アーサー・D・リトル
コーポレイトディレクション、経営共創基盤などが有名でしょうか。
求められる要件・経験
比較的専門知識のある方が評価される傾向にありますが、戦略ファームの場合はある特定の専門知識そのものが求められることは少ないと言えるでしょう。
なぜならば、戦略ファームは、既存の枠組みが変化していく中で仮説を立てでどのように対応するか検討することが求められるからです。そういった意味ではいわゆる地頭がよい方が好まれます。
従って、学歴は旧帝大、早慶以上の大学が中心です。実際、求人票も国内外の主要大学卒業が要件になっていました。
又、外資系コンサルティング会社では、英語力が求められ、面接はケース面接が必ずと言っていいほど行われます。
ケース面接とは、例えば「日本に電信柱は何本あると思いますか?」といった質問で必ずしも正解する必要はなく、思考プロセスが論理的かどうかという点が試されるものから中古車販売事業者の利益改善案という課題を与えられて、プレゼンをするといったものがあります。
こういったケース面接の対策は、新卒で就活をしていない限り、中々対応が難しく、エージェントによっては、対策をしてくれるところもあります。
又、監査経験のみでなく、IFRS導入やDD、IPO支援等のアドバイザリー経験をしていると評価されるでしょう。
業務内容と会計士の経験は活きるか
ある大手の戦略コンサルティングファームを紹介された際は、業務内容としては
経営戦略立案にかかるコンサルティング業務
新規事業立案・実行支援
戦略実行のための組織改革・人材教育
M&Aにかかる戦略立案・仲介業務
といった内容でした。
戦略コンサルで会計士が通用するかは、かなり人によって異なってきます。
戦略コンサルだと元BCGの方やP&Gといった事業会社出身の方、投資銀行出身といった様々なバックグラウンドの方がいて、かなりレベルも高いです。
もちろん、会計・税務の知見を求められることもあるので、その分野では戦略コンサルや投信銀行出身者に対して強みになるでしょう。
ただ、監査経験を直接活かしたいのであれば、FASの方が監査経験が直接活きると思います。
それまでは会計士は、監査基準や会計基準に照らして判断する仕事をやっていたと思います。
監査にしてもデューデリジェンスにしても過去を一定の基準で評価するような仕事がほとんどなので、仮説を立てて、検証してといった将来志向の仕事にシフトしていくというのは、長く会計士をやっていればいるほど、軌道修正していくのは大変かと思います。
又、戦略系でも経営共創基盤の場合は、投資先に役員として派遣され、ハンズオンで業務をするケースもあります。
給与
給与水準では、監査法人よりも高いですが、年棒制で残業代はでないため、時給換算すると監査法人の方が高いケースがあります。ただし、外資系で成果主義が強く、20代でコンサルタントに昇格すると手取りが1,000万円を超え、高い評価を得た場合は、監査法人を超える報酬を手にできます。
アソシエイト(新卒・第二新卒)→シニアアソシエイト→コンサルタント→マネージャー→プリンシパル→パートナといった具合にプロポーションしていき、監査法人と同じような組織になっています。
中途で入社する場合は、アソシエイト(コンサルティング実務経験3年未満)かシニアアソシエイト(コンサルティング実務経験3年以上または専門職の経験)で採用されるケースが多いかと思います。
報酬の方は
アソシエイト(会社によってはアナリスト)がベース500~700+ボーナス50~200万
コンサルタントで年収1,000万~1,600万程度(ベース1000~1200万+ボーナス0~400万)
マネージャー年収1,500万~2,000万
シニアマネージャー 年収2,000万~2,500万程度
パートナー 年収3,000万以上
と監査法人よりは高いです。但し、労働時間は圧倒的に長いです。
そのほか、口コミサイト等をみると入社3年目まではそれほど高くはなく、600万程度。
4年目で昇格すると大きく上がるというのが一般的なようです。
私が紹介された求人は、年棒600~1200万と幅がありました。
周りで採用されている方もアソシエイトレベルが多いですね。
福利厚生として社宅等は、会社が借り上げにしてくれるケースが多く、節税ができるようになっているケースがあります。なぜなら通常の会社員をはるかに超える税率が適用されるため、会社側も勤労意欲をそがないための、節税手段として用意しています。
労働環境
知り合いが戦略コンサルで働いていますが、プロジェクトがあるときは、終電では帰れず、タクシー帰り、家に戻って作業し、休日も仕事をしています。
仕事が好きでないと長くはやっていけないのではと思います。プロジェクトがないときは比較的暇らしく、長期休暇をとって海外旅行にいっています。この辺は監査法人と似ているかと思います。
ちなみに知り合いは、新卒3年程で年棒800万以上もらっていますが、労働時間を考えると十分な対価とはいえないでしょう。パートナーに昇格すれば、数千万の年棒になりますし、経営コンサルの経歴は転職上も高く評価されるため、中長期的に考えれば必ず戦略コンサルでの経験はプラスになるはずです。
又、上記の報酬水準を維持するために、アップオアアウトの社風となっています。
なぜなら規制産業でもなく、又強い参入障壁をもっている業界でもないため、高いパフォーマンスの人に高水準の報酬を支払うためには、一定期間に成果を上げられない社員を抱えておく余裕がないからです。3年程度で多くの人が別の会社・業界に転職することとなりますので、常に次どうするかを考えておく必要があります。又、外資系のコンサルで何年も勤めたということは、一定のスキルの証明にもなりますので、留意した方がよいです。
IT系コンサルティング
大手総合コンサルティング
総合型だとアクセンチュア、アビームコンサルティング
会計系Big4だと、PwCコンサルやデロイトト―マツコンサルティング、EYストラテジー・アンド・コンサルティング、KPMGコンサルティング等が挙げられます。
その中で会計士が転職して監査法人の経験を生かせるのは、会計系のアドバイザリーかと思います。
総合系の業務内容として、IT系のコンサルも行っているアビーム等の場合は、一例としてIFRSの導入支援コンサル、ビジネスプロセスのグローバル標準化支援、経営情報の統合基盤構築支援、内部統制構築支援・業務効率化支援等が挙げられます。
会計系のコンサルタントとして監査法人の経験を生かせるケースが多いかとおもいます。
IT系コンサルの魅力としては、決算早期化やBPO支援をしたい場合、支援するソフトウェアやIT部門が豊富でバックアップが受けられる点です。
年収は、アクセンチュアの場合で
アナリスト(入社1~3年):430~500万程度+残業代
コンサルタント(入社3年~7年):550万~650万程度+残業代
マネジャー(入社6年~10年):800万~900万程度+ボーナス
程度で監査法人とほぼ変わらない水準でしたが、近年はアクセンチュアが大量採用により急拡大しており、報酬面でもマネージャーで1,500万程度とかなりあがっているようです。
アクセンチュア、PwCコンサルやデロイトト―マツコンサルティングでは、戦略コンサル部門も抱えている法人では戦略コンサルとしての採用もあります。
中小コンサル
主に中小企業を顧客としてコンサルをする中小コンサルには船井総合研究所、タナベ経営、日本能率協会コンサルティング、ビジネスコンサルタント等があります。
華やかな戦略コンサルと比較して、訪問営業等泥臭い仕事も多く、規模が小さくなると年収は低下する傾向にあり、報酬水準面だけを考えると魅力は薄いでしょう。
シンクタンク系
シンクタンク系としては、三菱総合研究所(MRI)、野村総合研究所(NRI)、日本総合研究所(JRI)等があります。
報酬水準は、報酬水準が高いNRIの場合で
総合職 25歳 400~ 500万円
専門職 20代後半 500~ 600万円
副主任 20代後半~30代前半 600~ 800万円
主任 30代前半~30代後半 800~1100万円
上級専門職(管理職) 30代後半~ 1100~ 万円
程度で日系企業としては高水準ですが、コンサルとして考えると見劣りがするかもしれません。
会計コンサルティング
会計系のコンサルティングは、決算早期化、IFRS作成支援、USGAAP作成支援、J-SOX導入支援、IPO支援、M&A、開示作成支援等が主な業務内容となりますが、会計コンサルが中心のケースはあまり多くはありません。
上記のITコンサルを中心でやっていて、会計コンサルも一部の業務ラインとして提供しているケースが多いです。
会計コンサルは、作成された決算書の適正性をチェックする監査法人とは逆の立場で仕事をすることが多く、クライアントから感謝されることも多く、やりがいを感じることも多いです。
一方で報酬面でいうと監査法人よりもハードな労働環境でありながら、報酬面は監査法人よりもやや高いか変わらないぐらいなので、報酬面に不満を感じる方もいます。
又、監査法人は監査という安定収入がありますが、コンサル会社は、プロジェクトベースのいわゆるスポット案件が多いため、景気悪化局面ではリストラや給与削減のリスクがあります。
所属する組織規模にもよりますが、独立を考えると監査法人よりも中小企業相手の仕事も多く、業務の幅が広がるということはいえるかと思います。
M&Aコンサル
最近M&Aの増加もあり、増えているのがM&A関連の会社です。
監査経験しかない会計士の場合、コンサルというと監査経験が最も活かせるFAS系コンサルの転職が多いです。
主に会計士は財務DD(Due Diligence)を担当することになります。
年収は監査経験のみだと700~900程度で、これに成果報酬ボーナスがプラスされます。
好景気で評価がよい場合だとシニアクラスでも1,000万を軽く超えてくることもあり、監査法人からの転職先として人気もあります。
裁量労働制をとっており、残業代は深夜残業や法定休日のみ支給とされる会社が多いです。
残業代が出る会社は稀と思っておいた方がいいかと思います。
監査法人は裁量労働制は採用していませんが、監査法人系のFAS(KPMG FAS)だと裁量労働制になったりするので、注意が必要です。
M&A会社は案件によって業績が大きく左右されます。
FA(Financial Adviser)としてM&Aの成否に関わらず、アドバイザリー料はもらえますが、成功報酬の方が割合は高いです。
対象とする顧客により業務の担当できる業務の幅が決まってきます。
BIG4系FAS
BIG4の監査法人系では、
・EYフィナンシャル・サービス・アドバイザリー
・KPMG FAS
・デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
・PwCアドバイザリー合同会社があります。
監査法人系のFAS会社は、取り扱う案件の顧客はグローバル企業、大手上場企業、外資系企業などが対象となります。
従って、どうしても業務分担が細分化され、一気通貫でやるというよりもフェーズごとに担当チームが分かれ、複数の専門チームが連携しつつ、クロージングにを行うことになります。
一気通貫で最後まで自分でやりたい、全体の流れを経験したいという方には、向いておらず、コツコツと職人のような仕事がしたいという方に向いているのではないかと思います。
監査法人で監査をやっていた方は営業は苦手で職人的な仕事の方が向いているかと思いますので、監査法人系のFASに行くというのも一つの手です。
M&A専業の独立系
GCAサヴィアン(東証一部)
日本M&Aセンター(東証一部)
ラザードフレール等が有名です。
報酬水準は、成果報酬が多く、かなり高水準ですが、監査法人系よりもスピード感が求められ、成果主義で営業ができない人にはつらいかと思います。
税理士法人系FAS
税理士法人が母体のFAS会社は、顧客とする企業は、国内中堅企業、成長企業、オーナー企業などをメインの顧客層としているため、監査法人系と比べて案件金額も小粒です。
従って、あまり多くの人員を投入するわけにはいかず、すべての業務プロセスを経験することができます。業務負荷も報酬水準の割には高いです。
その他会計支援コンサル
Big4だと監査法人の事業部でも会計コンサルは行っています。
BIg4の中で会計支援コンサルに強いのが、PWCあらた監査法人で財務報告アドバイザリー事業部で行っています。その他だとトーマツが非監査業務に強いです。
業務内容としては、以下のような業務等が挙げられます。
・IFRSやUSGAAPにもとづく財務報告作成アドバイス業務
事業会社では、中々IFRS導入等に対応できる人材が不足しているので、IFRS導入のスケジュール作成や現場への説明、IFRS組替仕訳の作成支援、連結パッケージ作成支援等会計士としての経験がいかせる内容です。
・財務報告体制・プロセス構築アドバイス業務
例えば、連結決算が組める人材が不足している事業会社でエクセル連結や連結システムの導入等規模は異なりますが、中に入って作成支援をする業務が考えられます。
その他、業務プロセスの見直しや作成しているエクセルファイル効率化等いわゆるBPR業務等が主な内容になろうかと思います。
・J-SOX およびUS-SOX 法への対応支援業務
最近では内部監査の整備・運用評価をアウトソースする流れもあり、需要が高まっています。
再生系
再生させなければならない会社は業績であったり、財務体質であったりどこかしら問題がある企業でその問題解決策を提案するのが再生系の仕事内容になります。
そういった会社は、銀行から借り入れをしているが、業績面でお金を返せないといったケースが多く、金融機関もお金を返してもらわなければいけないので、金融機関から案件が持ち込まれるケースが多いです。
お金を計画敵に返済するためには将来の事業計画が必要となりますが、この事業計画の策定支援をしたり、財務体質やコスト体質を変えるためのリストラクチャリング案を提示したり、
計画が絵に描いた餅ではなく、計画通りに実施されるかモニタリング、サポートしていくのが、再生業務の基本的なお仕事になります。
再生業務は、そもそも顧客があまり稼げていない会社なので、報酬面ではM&Aアドバイザリーよりは低いケースが多くなります。
コンサルにおすすめの転職エージェント
コンサルにおすすめの転職エージェントは上記の
戦略コンサル
総合のコンサル
会計コンサル
いずれの分野への転職を狙うかによって得意とするエージェントが異なってきます。
戦略コンサルへ転職する場合
戦略コンサルへの転職を希望する場合は、会計士の転職者はマジョリティではないので、キャリアコンサルタントにコンサルファーム出身者が多く、ファームとの繋がりも強いムービンストラテジックキャリアやムービン出身者が立ち上げたコンコード等の戦略コンサルに強いエージェントを使うとよいでしょう。
又は、BIZREACH(ビズリーチ)
等で戦略コンサルに強い個人エージェントを探すとよいでしょう。
戦略コンサルの場合は、書類選考の後にケース面接が行われることが多く、専用の対策が必要なので、戦略コンサルに強いエージェントをおすすめします。
ビズリーチだと戦略コンサルから直接スカウトがきたりすることもあります。
今は戦略コンサルも人不足で昔に比べるとハードルを少し下げて採用しているようです。
総合系のコンサルへ転職する場合
総合系上記のムービンの他、コンサル専門のアクシスコンサルティング等を使うといいでしょう。
日系のシンクタンク系の会社の場合は、募集がアクセンチュア等に比較して少ないので、大手エージェントであり、コンサルの専門部署もあるリクルートか JACリクルートメントを使うと募集求人があるケースがあります。
又、アクセンチュアやIBM等の場合は、BIZREACH(ビズリーチ) 上で直接スカウトがくることがありました。
会計系コンサルへ転職する場合
Big4や税理士法人系の会計系コンサルへ転職する場合は、マイナビ会計士やMS-JAPAN といった会計士の転職支援に強いエージェントを活用するとよいでしょう。
MS-JAPANは会計士や弁護士といった士業の転職支援実績が豊富にあり、求人数と会計士の業務理解を兼ね備えたエージェントとしておすすめできます。
マイナビのプロモーションを含みます
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