大学生の方で公認会計士を目指そうと考えているが、商学部・経済学部・経営学部といった会計系の学部でない方の中には、公認会計士試験合格に大学の学部選びが影響があるのか心配している方がいるかと思います。
又、これから大学への入学を考えているが、公認会計士の仕事に興味を持っている高校生の方も学部の影響があるのか気になっている方もいるかもしれません。
今回の記事では、公認会計士試験合格に大学の学部により有利な点、不利な点があるかについて大学の学部別合格者数についても触れつつ、取り上げました。
大学の学部別 会計士試験合格者数
まず大学別の公認会計士試験の合格者数は、公式には公表されておらず、各大学が独自に集計・公表しています。有名なのが、合格者数トップの慶応義塾大学 三田会の公表資料です。
しかし、残念ながら慶応義塾大学の学部別合格者数の資料は公表されていません。
又、慶応義塾大学に次ぐ合格者数を輩出している早稲田大学も学部別合格者は公表しておりません。
そこで、学部別合格者数を出している大学の合格者数をピックアップしてみてみましょう。
明治大学 学部別合格者数
年度 | 商学部 | 政経学部 | 経営学部 | 他学部等 | 計 |
2016 | 21 | 5 | 17 | 11 | 54 |
2017 | 28 | 6 | 15 | 4 | 53 |
2018 | 25 | 9 | 17 | 9 | 60 |
2019 | 25 | 7 | 10 | 5 | 47 |
まずは、例年合格者数3位につけている明治大学の学部別合格者数をみていきましょう。
上記によると最も会計士試験と関係のあると考えられる商学部の合格者数が2016年は4割程度、2019年は5割超を占めています。
又、関係性もある程度ある政経学部、経営学部も含めると8割~9割程度が合格者数を占めています。
ただ、これは、元々明治大学には会計士試験を目指す人のための経理研究所があり、会計士を目指す方が入学してくるという傾向もあり、一概にはいえません。
特に2016年~2019年にかけて商学部の合格者数の占める割合39%→53%に増加しており、この傾向があることが推察できます。
上記結果は、あくまで会計士を目指す人のための経理研究所がある明治大学の場合のケースとして考える必要があります・
中央大学の学部別合格者
年度 | 商学部 | 経済学部 | 法学部 | 文学部 | 理工学部 | 総合政策学部 | 合計 |
2017 | 42 | 9 | 5 | 2 | 1 | 1 | 60 |
2018 | 52 | 13 | 5 | – | – | – | 70 |
2019 | 36 | 4 | 7 | – | – | 1 | 48 |
続いて、明治大学に次ぐ、合格者数を出している中央大学です。
やはり商学部の占める割合が7割を超えています。
これも中央大学には、経理研という会計士を目指す方のための制度が整備されているというのがあると思います。
ただ、中央大学は法学部の合格者も一定数おり、年度によっては経済学部よりも多くなっている点は注目に値します。
立命館大学の学部別合格者数
学部 | 合格者数 |
経営学部 | 23 |
経済学部 | 9 |
政策科学部 | 2 |
法学部 | 1 |
スポーツ健康科学部 | 1 |
計 | 36 |
立命館大学の学部別合格者数(2018年度)を見てみると経営学部が6割超を占めています。
立命館大学にも公認会計士試験受験生専用自習室が用意されています。
上記大学別学部別の合格者数をまとめてきましたが、「商学部や経済学部、経営学部がほとんどやんけ…」とがっかりした方もいるかもしれません。
だた、学部別の合格者数をみるだけでは、どの大学が有利かはわかりませんので、他学部の方もがっかりする必要は全くありません。
特に上記で挙げた学部別合格者数を公表している大学は、公認会計士になるための制度が整備されたことを売りにしている大学です。
学部別合格者数をあえて開示しており、積極的にアピールしている面はありますので、データが偏っています。
元々商学部や経済学部を目指す方は、会計や経済といったお金に興味がある方が多いことから受験者に占める割合も高いからです。
学部別の合格率を見ないと、どの学部が有利かはわからないでしょう。
これは、どの大学も公表していないので、わかりません。
ただ、傾向としてどの学部の方が多いのか、イメージ通り経済学部、商学部の方がかなり多いというのは、数字でわかったのではないでしょうか。
大学の学部別就職先から見る
上記で触れたように合格者トップの慶応と2位の早稲田では、学部別の公認会計士試験合格者数を開示していません。
しかし、学部別に卒業生の進路を公表しており、合格者の多くは大手監査法人へ就職することからある程度監査法人への就職状況からどの学部の合格者が多いのか傾向をつかむことができます。
慶応義塾大学 学部別の監査法人への就職状況
上記は2018年度の卒業生の学部別の大手監査法人への就職状況です。
大学の卒業生の進路資料より作成しています。
大手監査法人への就職者の内、経済学部で40%超、商学部も合わせると7割近くを占めています。
会計士試験に最も親和性の高いと考えられる商学部よりも経済学部の方が人数が多いですね。
法学部の方も2割超えているのも注目点です。
理系出身の方は理工・理工学研究科の方それぞれ1名とかなり少な目となっています。
やはり理系の方は、そもそも会計士になろうという方が多くないですし、文系に比べて、実験やレポート等が忙しいため、時間も取りにくい傾向にあるからでしょうか。
早稲田大学 学部別の監査法人への就職状況
上記は早稲田大学の2018年度の卒業生の学部別の大手監査法人への就職状況です。
こちらも大学のキャリアセンター資料より作成しています。
早稲田大学の場合は、慶応とは異なり、政経よりも商学部の割合が高く、5割を超しています。
商学部、政経で7割超を占めています。
その他、教育や国際教養、法学部といった方がまばらにいる程度であり、理系の方はこの年度については見られない状況になっています。
公認会計士試験受験資格の観点
又、そもそも学部によって、会計士試験を受ける資格がないと始まりすらしません。
受験資格の観点から見ていきたいと思います。
公認会計士試験は年齢、性別、学歴、国籍を問わず誰でも受験することができますので、大学の学部は全く関係ありません。大学を卒業している必要すらありません。
Q.公認会計士試験に受験資格の制限はありますか?
A.受験資格の制限はありません。年齢、学歴、国籍等にかかわらず、どなたでも受験することができます。
公認会計士・監査審査会 公認会計士試験に関するQ&Aより引用
商学部・経済学部・経営学部以外の方も安心して会計士を目指すことができます。
公認会計士試験の科目の有利・不利の観点
続いて、公認会計士試験の試験科目から学部ごとの有利不利をみていきましょう。
公認会計士試験は、マークシート式の短答式試験(年2回)と記述式の論文式試験から構成されます。
短答式試験は、財務会計論、管理会計論、企業法、監査論の4つの科目で構成されています。
論文試験では、会計学(財務会計論・管理会計論)、監査論、企業法、租税法の4つの必須科目と経営学、経済学、民法、統計学の4つの選択科目の中から1科目選択をして、受験することとなります。
上記の科目をみるとやはり財務会計論、管理会計論、監査論等の授業が多い商学部、経済学部、経営学部の方が多少有利になるように思います。
法学部の場合は、企業法、租税法、選択科目の民法が有利に働くでしょう。
理系学部の場合は、選択科目の統計学が有利になる可能性があります。
ただ、統計学は、元々かなり数学が得意な方が選択することもあり、中途半端な数学力では逆に不利になる可能性が高いので、慎重に選んだ方がいいでしょう。
なお、公認会計士というと数字を扱う仕事だから理系の方が有利という印象を持たれる方もいるかもしれませんが、簿記に数学的な素養は全く必要ありません。
多少管理会計の理解が速いかもしれない程度になります。
但し、公認会計士試験の合格のためにはダブルスクールでの学習が主になり、大学の授業が直接役に立つことは期待しない方がいいでしょう。
深く理解するのに時々役にたったり、会計士の学習をしていれば、単位が取りやすかったり程度です。
ただ、大抵の日本の大学の単位取得は、数時間対策すれば問題なく、取得でき、会計士の勉強をしていれば、さほど難しいことではないでしょう。
大原やTACといった公認会計士試験の専門学校の教材をしっかりとこなしていけば、どの学部でも問題なく合格が可能ですので、そこは全く心配する必要がないかと思います。
会計士試験合格後のキャリアの観点
公認会計士試験合格後の観点からみてみると商学部・経済学部・経営学部の方が多くを占めています。合格者トップの慶応・早稲田の就職先をみてもそれがわかります。
その意味では、既に同じ公認会計士試験に合格者している以上、定番学部では、特に希少性はないといえます。
一方、例えば大学では会計ではなく、法律を学んでいたという方がその後のキャリアに広がりが出る可能性もありますし、理系学部の場合は、メーカーの技術やビジネスの理解等に役立つ可能性もあります。
完全に主観ですが、理系出身の公認会計士の方は、論理的思考力や分析力に優れており、優秀な方が多い印象です。
特に理系の公認会計士の方は少ないので、公認会計士になれば、そのバックグラウンドを活かして活躍する可能性が高まります。
なお、監査法人の就活でいうと学部自体は、ほぼ影響しません。
どちらかというと同じ条件であれば、商学部・経済学部よりも法学部や理系学部の方が興味を持たれる可能性があります。
まとめ
上記、大学の学部別 会計士試験合格者数を見てみると
✔やはり合格者は、文系学部がほとんどを占めている
✔その中でも会計士試験と親和性のある商学部・経済学部・経営学部が多い
✔ただ、大学によっては法学部の方等も合格者には多い
ということがわかります。
但し、商学部・経済学部・経営学部に合格者が多いのは、元々会計に興味がある人間が上記学部に集まるため、受験者が多いという側面もあるのではないかと思います。
受験資格や試験の科目、合格後のキャリアの観点から商学部・経済学部・経営学部以外の学部でも大きな不利な点はなく、学部による有利・不利はほぼないといえるでしょう。
下記記事で公認会計士の専門学校について比較をしているので、よろしければあわせてご覧ください
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