30代職歴なしの方でも公認会計士試験に合格すれば就職できるのか

公認会計士試験

※この記事にはプロモーションが含まれています。

30代でこれから公認会計士を目指そうと考えている方は、年齢面が気になる方が多いのではないでしょうか。特に公認会計士試験に合格すれば監査法人に就職ができるのか不安に感じる方もいるでしょう。

今回は、30代の職歴がない方が公認会計士を目指す際に気になる「30代職歴なしの方でも公認会計士試験に通れば就職できるのか」について解説していきます。

公認会計士試験合格者の年齢からみる30代の受験

まず実際の公認会計士試験の合格者のデータを使って、公認試験合格者の平均年齢及び30代の公認会計士試験合格者がどの程度の割合を占めているのか、みてみましょう。

試験合格者の平均年齢は25歳~26歳

令和2年(2020年)公認会計士試験の合格者調べによると以下のように合格者のマジョリティは20代前半が約6割、20代後半が約2割と多くを占めています。
平均年齢※を計算してみると26.1 歳程となり、30代以降は多数派とは決して言えません。
※20歳~25歳未満は22.5歳としてみなして計算

しかしながら、30代前半で1割、30代後半で3%程の合格者がいることも事実です。
論文式の合格率もやはり時間が取れる学生や受験に専念されている方に比べて働きながらの受験が多いことから低くなっていますが、30代前半であれば25%程度と悪くない数字です。

30代前半の方や30代後半の方でも合格に複数年かかった場合も考えて、ここでは30代~40代前半の合格者数を複数年みてみましょう。

30代前半

30~35歳未満の合格者数は以下のようになっています。30代前半で約1割程度を占めています。

年度 願書提出者 論文式受験者 合格者 合格率 論文式合格率 合格者構成比
2018 1,820 566 123 6.8% 21.7% 9.4%
2019 1,747 555 142 8.1% 25.6% 10.6%
2020 1,760 507 128 7.3% 25.2% 9.6%

 

30代後半

35~40歳未満の合格者数は以下のようになっています。30代後半の方は、5%にも満たない割合で少数派であることがわかります。

年度 願書提出者 論文式受験者 合格者 合格率 論文式合格率 合格者構成比
2018 1,155 345 51 4.4% 14.8% 3.9%
2019 1,170 357 58 5.0% 16.2% 4.3%
2020 1163 325 44 3.8% 13.5% 3.3%

40代前半

40~45歳未満の合格者数は以下のようになっています。40代ともなるとかなり少数派となりますが、人数は20人程度は存在しています。

年度 願書提出者 論文式受験者 合格者 合格率 論文式合格率 合格者構成比
2018 630 175 19 3.0% 10.9% 1.5%
2019 677 179 23 3.4% 12.8% 1.7%
2020 685 167 23 3.4% 13.8% 1.7%

30代未経験の就職について

30代未経験の方の就職と転職について私の経験や周りの話を踏まえて考えていきたいと思います。

又、社会人としての職歴が全くない方と全く会計とは関係がないが、社会人としてのなんらかの職歴がある方でも状況が変わってきますので、そちらについても触れていきます。

まず公認会計士試験合格者の就職先ですが、多くは監査法人に就職することになります。
事業会社やコンサルという道もありますが、やはり監査は公認会計士の独占業務であり、一度経験したいという方が多いです。
会計士としての実務経験を積む、実務補習所へ通うという観点でもファーストキャリアとしては、監査法人で働いたことを後悔したという話はあまり聞きません。
監査法人が試験内容を直接活かせる職場というのは、間違いないでしょう。

大手監査法人採用数からみる就職状況

非常に基本的なことですが、どのような要因で監査法人の就職状況が変わるかというと非常にシンプルで需要と供給のバランスです。
需要は、監査法人で必要とする人数を指し、供給は公認会計士試験合格者の人数を指します。

監査法人で必要な人数 > 合格者人数 →売手市場
監査法人で必要な人数 < 合格者人数 →買手市場
となります。

まず大手監査法人の就職人数をみてみましょう。
最新の2021年2月時点では採用数をHPに公表されているのは、トーマツの300人程度という数字だけです。
データがやや古いことをご了承いただければと思いますが、売り手市場の現在は概ね7割~8割程度が大手監査法人に就職できている状況です。
下記の日経新聞の記事によると大手監査法人であっても目標の採用数をクリアできたない年もあったようです。
最も人員が逼迫していた時期に比べると緩和されてきているものの、まだ売り手市場といえるでしょう。

年度 合格者数 大手採用人数 カバー率
2016 1,098 1,040 95%
2017 1,215 970 80%
2018 1,294 1,000 77%

Source: 日経新聞(2018/11/22、2017/11/17)

新日本監査法人など4大監査法人による2017年度の公認会計士の採用計画がまとまった。4社合計で970人を採用する見通しで、16年度実績に比べ1%増にとどまる見通し。会計監査の現場では不正会計やルールの国際化への対応で人手不足感が強いが、採用の前提となる会計士試験の合格者は17年度もほぼ前年並みとみられ、厳しい採用環境が続きそうだ。

金融庁は17日に17年度の会計士試験の合格者を発表する。各監査法人はその後本格的な採用活動に入る。4大法人のうちトーマツは300人を採用する計画で、16年度比で5%増やす。
ただ他の監査法人はほぼ横ばいになりそうだ。

監査法人は会計士を計画通りに採用できなくなっている。毎年、会計士の国家試験は約1000人が合格し、大半は新日本、トーマツ、あずさ、PwCあらたに就職する。16年度は4法人で合計1040人の採用を目指していたが、実際に確保できたのは約9割の958人にとどまった。
(Source:日経新聞(2017/11/17)より一部抜粋)

全体の話はこれぐらいにして、30代の方についての話をすると
20代前半と後半で概ね合格者の7割~8割程度を占めており、それだけで大手監査法人の枠がほぼ埋まってしまうようにも考えられます。

しかし、20代の全員が大手監査法人への就職を希望するわけではなく、関連領域の職歴がある方の中には、あえて中堅監査法人へ就職する方や学生合格の方は一般就活をする方もいますので、売り手市場においては希望すれば十分にチャンスがあります。

会計関連の職歴がある方は、大手監査法人に行くと他の新人と同じ待遇となるため、あえてこれまでの経験が加味される中堅監査法人やコンサル等中途採用でいく方もいます。
従って、大手監査法人に30代合格者の全員が入れるかというと難しいですが、30代前半で全く会計や監査とは関係なくとも社会人としての職歴がある方は、今の状況だと採用される可能性は比較的高いといえるのではないでしょうか。
実際、30代前半で関連領域の職歴がない方が採用された話は珍しくはありません。
30代後半で全く職歴がない方が大手監査法人への就職を希望する場合は、高いコミュニケーション能力や高い英語力がある等の特徴が必要になるでしょう。

大手監査法人以外への就職 |中堅監査法人や事業会社へ

しかし、日本には就職先は大手監査法人しかないわけではなく、中堅監査法人もありますし、小規模の監査法人含めると200以上あります。

中堅(太陽、優成、東陽、京都、仰星等)の監査法人も規模により異なりますが、例年10~20名程度は採用しているため、中堅全体で100名以上の需要はあると考えられます。

太陽監査法人の例でいうと2020年2月の経営財務のインタビューによると直近3年間で定期採用として,論文式試験合格者を120名以上採用しているということです。

どこも人手不足であることには変わりないので、1法人1~3名採用すると仮定して300名~500名程度の需要が想定されます。
試験合格者(供給)よりも監査法人の求人数が多い状況となっています。

従って、売り手市場が続く限りは、大手監査法人にこだわらないのであれば、監査法人で経験を積むことができるでしょう。
監査法人で公認会計士として登録するまで勤務すれば、後は大手監査法人に転職する、事業会社に転職する、コンサルに転職する、独立開業する等の道があります。

公認会計士を目指す上でリスクとして認識すべき点

合格年度により監査法人の就職状況が異なる

上記で触れたように現在は売り手市場ですが、2006年~2008年にJ-SOX需要もあり、大量に合格者を出し、監査法人でも大量採用を行いました。
その後、リーマンショックが発生し、2009年~2012年頃までの合格者は、就職状況が非常に厳しい冬の時代がありました。
当時は、在学中に合格しても大手監査法人に就職できない方が多数でたように記憶しています。

公認会計士試験に合格しても就職できない就職浪人が発生し、監査を行わない財務会計士(仮)といった新しい資格を設け、企業への就職を促すといった案まで出ました。
上記で触れたように就職状況は合格者数と監査法人の必要とする数で決まりますが、J-SOX特需のため、大量採用をしたものの、その後リーマンショックも重なり、試験合格者を監査法人だけでは吸収できない状況となりました。
大手監査法人どころか、中堅監査法人にも応募が殺到し、中小の事業会社の経理や小さなコンサル会社へ就職をする方も出たようです。

年度 合格者数 大手採用人数 大手カバー率
2006 1,372 1,511 110%
2007 2,695 2,442 91%
2008 3,024 2,060 68%
2009 1,916 1,074 56%
2010 1,923 700 36%
2014 1,076 1,050 98%
2016 1,098 1,040 95%
2017 1,215 970 80%
2018 1,294 1,000 77%

※合格者数は、旧試験の合格者除く
(Source:日本経済新聞 2006/12/07朝刊、2007/12/01朝刊、2008/12/01朝刊、2009/12/05朝刊、2010/11/16朝刊、2017/11/17朝刊、公認会計士試験合格者調べを元に作成)

仮に再び2009年~2012年頃のような状況となれば、30代で全く職歴がない方の大手監査法人への就職は厳しいといわざるいえないでしょう。

年下の上司とうまくやっていけるか

又、30代で大手監査法人に新人として入社する場合は、年下の上司と普通にやっていけるかという点も重要です。
合格者の内、20代前半の方が半数超を占めている世界ですから必ずと言っていい程、年下の上司とあたることになることになるかと思います。
25歳程で主査(現場のリーダー)をやっている方もいるので、人事評価をされることもあります。
年下とはいっても会計監査の経験では、先輩になります。
年下のいうことなど聞いていられるかというプライドが高い方には厳しいでしょう。

面接官としても、スペック的な面よりもチームで一緒にはたきたいかどうかをみています。
年齢が高いとチームにフィットするかという観点で見られます。
いくら能力が高くてもプライドが高く傲慢で謙虚さのかけらがない方よりも多少年齢がいっていても謙虚で素直な方が好まれるでしょう。

必要以上に不安に感じる必要はない

ポジティブな点だけいうのもフェアではないため、注意すべき点も取り上げましたが、現時点では必要以上に不安に考える必要はないかと思います。
上記のリスクを踏まえてよく考えるべきなのは、家族もあり、現職を退職をして公認会計士試験に専念しようとしている方です。
30代で職歴がない方であれば、そもそも公認会計士試験を目指して勉強をしたことで得られることこそあれ、失うものは専門学校の授業料ぐらいです。
又、職歴がある方も仮に監査法人へ就職できなかったとしても、同じ会社で部署異動するチャンスもでてきますし、公認会計士登録後、別の道を探すという選択肢もあります。

少なくとも通常のルートで未経験の職種に転職を希望するよりも非常に確度が高いでしょう。

なお、2009年~2012年頃の合格者で希望したが大手監査法人に就職できなった方も2013年頃には状況が改善されたこともあり、大手監査法人に転職したり、コンサル会社に残って出世したりと最終的にはうまくいっている方も多く、必要以上に不安に感じる必要はないでしょう。

まとめ

現状の合格者と監査法人側の需要の状況だと30代前半までであれば、職歴がなくとも大手監査法人へ就職することは可能な状況と推察されます。
30代前半で職歴があれば、よほど面接で問題がなければ就職可能でしょう。
30代後半であれば、何らかの職歴があれば大手への就職はややハードルが高いものの可能な状況です。
大手にこだわらず、中小監査法人も視野にいれるのであればかなり高い可能性で監査法人でのキャリを積むことは可能な状況といえるでしょう。

下記で会計士を目指すうえで必須の専門学校の比較をしています。
もし公認会計士を目指すことに興味を持った方は参考にしてください。

公認会計士試験のおすすめの専門学校・予備校 TAC・大原・CPA会計学院を徹底比較
公認会計士試験は範囲が膨大で独学で合格することは非常に困難といえる。公認会計士試験の専門学校にはどのような選択肢があり、どこが1番いいのか。TAC、大原、CPA会計学院等について授業・テキストの質、サポート体制、費用の観点で比較してみた。これから公認会計士を目指して専門学校を選ぶ方の参考になれば幸いだ。

コメント